「この人が出ているなら観てみようかな」。そんなふうに信頼を寄せる役者さんが、誰でも一人はいるのではないでしょうか。

きっと多くの映画好き・ドラマ好きから絶大な信頼を寄せられているだろう、女優の門脇麦さん。6月2日(金)公開の映画『渇水』では、幼い娘たちを置いて家を出ていってしまう若い母親を演じています。共感しにくい役柄、格差社会とそのしわ寄せが子どもに向かってしまう過酷な物語を、門脇さんはどう受け止めたのか。率直な言葉で語ってくれました。
 

 

自分が好きなものだけやっていると、どんどん視野が狭くなってしまう
 

ーー門脇さんのお芝居を見るたびに、「見て良かった」「やっぱり安心と信頼の門脇麦だ!」と楽しませてもらっています。

ありがとうございます。うれしいです。

ーー出演する作品は、自分でコントロールしているんですか?

基本、社長とマネージャーさんと一緒に脚本を読んで、「どうしたい?」という確認みたいなやりとりをしています。

自分が好きなものだけをやっていると、どんどん視野が狭くなってくる時もあるので、私一人では怖くて決められないです。「ちょっと違うかな?」と思っても、やってみる。作品があまりフィットしなかったとしても、そこでの出会いが次の仕事に繋がったりもしますし。私はそういうセンサーがからっきしないので、事務所と相談しています。

ーー後々、過去の出演作の意味が見えてきたり?

そうです。だからあまり深く考えずに「やるやる!」って言った後に、「すごい大変なんだけど……!」となることもよくあります(笑)。

ーー今回の『渇水』ではいかがでしたか?

私はこういう“人間が描かれている作品”が好きでこの仕事をやってるので、いい脚本だなと思いました。でも、いざ始まったら母親の役で、しかも育児放棄のようなことをするわけで。「大変な役を引き受けてしまった……」と思いました。

ーー門脇さんが演じる有希は、夫に出ていかれて、2人の娘と暮らすシングルマザーです。中卒で、実家との関係が悪く、誰も頼れない。そんな中で新しい恋人と出会い、娘たちを置き去りにしてしまう。そこから姉妹と、主人公の岩切(生田斗真)とのやりとりが映画の軸となって描かれます。門脇さんは有希について、「理解が困難」な役を「手繰り寄せて演じた」と公式にコメントされていました。

子どもを放ってそのまま帰って来ないというのは、演じてみても、仕上がった作品を見ても、やはり理解はしづらいなと思いました。多分、有希は子育てをするということや、自分が母親であるということに、リアルな実感を持てていないと思うんです。私も子どもがいないですし、子どもとどう接していいかまだ分からないので、自分が感じている子どもへの距離感を、有希の娘たちへの接し方にリンクさせられたらなという思いで演じました。
 

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