家族に変化の兆し


愛佳さんはまず、お子さんに必要以上に細かいことを指摘するのをやめました。できないことがあっても「そのうち、そのうち」と呟いて、おおらかに構えるよう心がけます。

また、夫の剛さんにもカウンセラーのところに一緒に通ってもらい、夫婦の方針を揃えるようにしました。そのうえでお子さんが学校に行きたくない理由をじっくりときいて、彼女の不安要素を失くすために登下校に付き添ったり、スキンシップをたくさんしたり、家族の時間を増やしたといいます。劇的な解決法はありませんでしたが、地道に2人で積み重ねていくと、状況は改善していきました。

それから2年かけて、娘さんはすっかり楽しく学校に通えるように。剛さんも、愛佳さんと交代で学校まで学校に送るなどしてくれて、「最初は引きずっていくなんて言ってたけど、なんだ、ちゃんと話せば、価値観の違いも埋められるんだ……」と実感したという愛佳さん。

人間関係は、ゼロか100かじゃない。期待通りにはいかないし、日々変化していく。

愛佳さんは娘さんの不登校問題を通して、そのことを実感したそう。

 

しかし、もちろん夫婦の問題が全て解決したわけではありません。愛佳さんは、引き続きカウンセラーのところへ通い、長い間自分のなかでくすぶっていた疑問に向き合います。 

 

「仕事や、地域の中での社会貢献、あるいは子育て……そういうものが私の人生の目標だと思い、懸命にやってみました。でもなんだかいつも心のどこかに穴が開いているような気がするんです。夫への関心が薄いことも、放っておいていいのかずっと疑問があります」

できるだけ正直に、全てを打ち明けたという愛佳さん。その結果、自分も知らなかった自分の本当の望みが次第に明らかになっていきます。