ファッションスタイリスト佐藤佳菜子さんが日常に感じる思いを綴る連載です。
関連記事
保護施設から我が家にやってきた2匹のヨークシャテリア>>
『着なくなった服を「部屋着」というファイル名に変換してとっておく』ということをしなくなったのは数年前。おかげで、不要な服でごったがえす引き出しが一つ減った。
でも、今年になって「そもそも部屋着不要説」が頭をもたげてきた。日々、短くなる老い先。残り少ない人生の中で、なにゆえ、誰にも見せられぬキテレツな服を着なくてはいけないのか。その上、そのような服を着ていることで、すこし外出するためにもわざわざ着替えなくてはいけないのは、とても非効率だと思ったのだ。
『快適に過ごせる範疇の「外着」を「部屋着とする」』という憲法を制定してから、わたしの暮らしは輪をかけて効率的になった。ただ、同じ服を家でも外でも着ている、というわけではない。あくまで「家用の外着」を作ったのだ。なんのこっちゃ。
夏仕様は、大好きなアメリカンスリーブのタンクトップ(カップ付き)に、やわらかでシワにならない素材のワイドパンツ。どちらもルームウエアとして売られているものではないけれど快適で、いつ見ても、自分悪くないぞ、と思えるくらいの格好。キャップをかぶったら、そのまま犬の散歩にも行けるし、近所へお買い物にいくのも問題がない。肌寒いときは、アニエス・ベーのカーディガンプレッション(あのボタンがたくさんついたスエット素材のカーディガン)を羽織ることに決めている。
同じセットを何組か用意して、毎日同じものが着られるシステムにした。かの有名なスティーブ・ジョブズ先生は、外着を選ぶ時間を惜しんで、毎日おなじ組み合わせの格好をすることに決めたようだが、その理論を部屋着に採用したのだ。先人の知恵である。偉そうに話しているが、ただの部屋着の話です。すみません。
先日、mi-molletの編集長の川良さんにお会いしたのですが、わたしがあまりにも連載を書かないものだから、内容はなんでもいいから「連載を連載するように」と励まして(やさしくたしなめて?)いただいたのですが、今週もやはり湧いてきた内容が、実にくだらなかったです。これも謝っておきます。すみません。なので、わが家の奇想天外な動物たちで、場を賑やかすとしよう。
そんなこんなで最近のわたしは、いらない服を本当に一枚も持っていません。歳をとるにつれ、どんどん不要なものが減り、生活が整理されてきたことにニヤニヤしています。年々、効率主義が進んでいますが、せめて気持ちぐらいは「余白」を持ち、そして、連載を連載できる大人になりたいです。
スタイリスト佐藤佳菜子さんのコーディネート
▼右にスワイプしてください▼
バナー画像撮影/川﨑一貴(MOUSTACHE)
文/佐藤佳菜子
構成/高橋香奈子
Comment