ファッションスタイリスト佐藤佳菜子さんが日常に感じる思いを綴る連載です。

 


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「文章が書きたい日」と「料理がしたい日」は似ている。創作意欲のHP(ドラクエでいう体力)が、体内で余っているとき。

大抵わたしのクリエイティブ心は、日々仕事に砕かれて、散ってしまっているので、つまり、文章が書きたい日と料理がしたい日は、撮影続きの日常生活ではあまりないということです。とかなんとか言っちゃって、ただ、連載を書かない言い訳です。ただし、言っておきたいのですが、エネルギーさえあれば、どちらもとても好きなことなのだけれど。

ところで、WEBやインスタグラムで、人気があるのは知っているのですが、自分のお買い物の報告や発表をするのが、とても苦手。スタイリストなのに何を言っておるかと、自分でも思うのですが、なんだか気恥ずかしいのと、買ったものに全然執着がないのと、単にマメじゃないという三重苦のせいでしょうか。ヘレンケラーのそれとは比べ物にならないチープ&マテリアルな苦なのが寂しい。

ちなみに、今シーズン何を買おうかと、思いを巡らせたり、悩んだりすることもあまりなく、わたしの買い物は、いつだって無計画で思い立ったら吉日、一期一会だ、えい、と持ち帰るスタイル。そんなわたしが、真剣に検討し、何度か足を運んでやっと迎えいれたものがありまして、、、それは、、、

じゃじゃじゃん(←古い)

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手前がメア11歳で奥がマリ10歳

保護施設からやってきた2匹のヨークシャテリアの姉妹。わたしには実際に目に入れるほど小ぶりでもなければ、目に入れるのをとても躊躇するほど毛深いけれど、心持ちとしては、まったく痛くないほど溺愛しているピグミがいます。これまで、現在13歳の彼女の寿命を、すこしでも縮めそうな因子には、いっさいの興味がなかったのですが、これは、もう仕方がなかった。

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ピグミと一緒にふたりをお迎えに行った日

動物をこよなく愛する双子の甥と姪に誘われて、ときたま訪れていた保護犬と保護猫の施設。ゴールデンウィークの最終日、大雨が降りしきる中、スカートから水を滴らせながら訪ねた施設に、彼らはいた。ケージの中から、ちいさな4つの眼でこちらをじっと見つめる姉妹。それはデジャヴに近くて、まるで小さな頃の双子の甥と姪を彷彿とさせた。

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センターで出会ったときのふたり

その場に一緒にいた妹(双子の母)も、わたし以上に4つの眼に親近感を感じて、すでに心を射抜かれている様子だった。ちなみにわたしたちはみんなで同居をしているので、もうこれは、みんなの総意といってよかった。ちょっと、ピグミを連れてきて会わせてみようとなり、すぐに家にとんぼがえりをして、ピグミを伴って施設に舞い戻った。

ピグミは、ほかの犬にちょっかいを出されるのが苦手なのですが、この姉妹は10歳と11歳。すでに中高年と言っていい年齢なのと、彼ら自身もほかの犬にはさほど興味がなさそうで、お互い、知らんな、という雰囲気。子犬だったら逆に、こんな落ち着いた関係にはならなかったかもしれません。懸念していたピグミとの相性が、険悪なムードでなかったのを此れ幸いと、里親に名乗り出たのであります。

保護施設は、ペットショップのように「かわいい〜」という思いつきで、その日のうちに犬猫をひきとることはできません。もう二度とこの子たちが辛い目に遭わないよう、最後まで責任をもって面倒を見られる家庭に引き渡したいのが施設側の意向。なので、こちら側の家の状況や、動物飼育の経験の有無などを聞かれる面接があって、さらに一定期間、ほかの里親希望の方を引き続き募集をして、最終的にセンターが一番適していると判断した家庭に、模擬飼育が許されるというシステムでした。

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我が家に到着したときのふたり

なんとなくわたしの感覚では、日本では、人間の子供も動物たちも、里子に引きとる条件がなかなか厳しいという印象がありました。引き取り手が独身ではだめだけど、新婚でこれから子供ができるかもしれないカップルもだめ、留守番が多かったらだめ、スペースがないとだめ。捨てられていた状況に比べたら、独身の愛情がたっぷりある人に育てられる方が、よっぽどよかろうと思うけれども、一般的な「幸せの基準」や「リスクの少ない条件」を設けないと、いちいち判断がむずかしいのであろうことも察しがつく。

ただ、保護への敷居があまりにも高くて、動物が大好きで責任感もあるし、経済的にも安定しているのに、手を出せないという人の声を何度となく聞いたし、わたし自身も、まさか自分が引き取れるとは思わなかった。いまは、家族と同居しているので、面倒をみられる大人が多いこと、姪や甥も幼児ではないし、家の広さも人数が多いゆえそれなりにあるので、なんとか信頼をしてもらえたのだと思う。

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ふたりはいつも身を寄せ合っている

それにしても、「動物たちが捨てられた経緯」とは。センターによって、崩壊したブリーダーから救出される子が多いとか、家庭の事情で引き取られる子が多いなど、傾向があるようにも感じるのですが、わたしが行ったセンターの子達は、面倒がみられなくなった、あるいは、亡くなられた高齢者の家から引き取られた子たちがとても多かったのが印象的だった。うちに来たふたりも然り。

百歩譲って飼い主が、介護施設入居、病気になった、亡くなったは、想定していたより早いタイミングで来てしまうこともあろう、でも、引っ越しにともなって飼育困難、老犬の夜泣きがひどく飼育困難、咬むため怖くなり飼育困難、仕事の出張が多くなり飼育困難、など、イノチになんて、まるでまったく重みがないかのような漫然とした理由の数々に、心が痛むなどでは片づかない、もはや憂鬱な気分になった。あぁ、わたしにもっと財力と場所と時間があれば、この子たち全員を引き取ってもいい。2匹しか連れて帰れなくてごめんねと、センターを訪ねるたびに思ってしまった。

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これはあの有名な芸「幽体離脱〜」ですよね?

さて、そんなこんなで、我が家にやってきた二匹。彼女たちは、もともと呼ばれていた名前を本人たちが覚えていたので、無理に変えずにそのまま呼んでいます。メアリーはメア、マリリンはマリ。さすがにフルネームのメアリーとマリリンだと、やけにドラマティック過ぎて、我が家の中では、逆におもしろおかしいので短縮。だって、かたやピグミ先輩ですよ?(本名はツナ)

家族から溢れるほどの愛情を注がれ、ゆるぎない自信と高い自己肯定感を持っているピグミは、おどろくほど安定したメンタルで二人を迎えました。そして、家の中で水が飲める場所、踏み台の使い方、庭へ出る方法などをデモンストレーション方式で教えてあげている姿を見るにつけ、こちとら、さらにピグミがかわいくて、かわいくて、かわいくて感無量。自分が愛されている自覚は、人間だけではなく犬の心も広くするのだ。

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左から1.8kg、1.9kg、3.5kg。え? チワワって世界最小って聞いていましたけど

中高年になってから、まわりを取り巻くすべての環境が変わったふたりは、1.8kgと1.9kgのスモールボディで健気に懸命にあたらしい世界に適応しようとしている。いかほどのストレスかと慮るだけで涙がちょちょぎれそうになる。それにしても、最近の心の琴線と涙腺の弱さよ。これは立派な加齢の証。いま、「はじめてのおつかい」なんかをみたら、顔が水という水で、げしょげしょになりそうだ。

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新入りふたりでピグミ先輩一人分という体格差

人生は壮大なヒマつぶし。おかげさまで新しいメンバーの加入で、暮らしに新鮮な風が吹き込んできました。まるで我が家は犬の老人ホーム。中高年の女子同士(はい、もちろん人間も含みます)、みんなで手を取り合って暮らしていくのだ。新作の靴やバッグの話ではないニューフェイスのご紹介に、みなさまがいかほど関心を示してくださるのかわかりませんが、今週はこれにて。本当を言うと、センターにいた猫も気になっているのですが、さすがに自重しています。

 
 


スタイリスト佐藤佳菜子さんのコーディネート
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バナー画像撮影/川﨑一貴(MOUSTACHE)
文/佐藤佳菜子
構成/高橋香奈子
 


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