そもそも夫に「恋愛感情」がなかった事実


「そんな夫に、すごくシラけてる自分に気づいたんです。でも……そもそも私、この人のこと本当に好きだったっけ? これまでときめいたり、ドキドキしたことってあったっけ? そう考えると、夫を好きとか愛してるというのじゃなく、そうだ、条件とタイミングが合ったから結婚したんだと、そのとき初めてハッとして」

最初から夫に恋愛感情がなかったから、浮気されても特に何も感じなかった。それを結婚後に気づいたというのは驚きます。けれど、予兆のようなものもなかったのでしょうか?

「何というか、独身の頃は『結婚すること』に必死だったんです。私が高校生くらいの頃に流行ったドラマで『女の価値は27歳が最高値! それ以降は値崩れを起こすのよ!』みたいなことを主人公の女性が何度も言ってたんですけど、当時は私だけじゃなく周りの女友達もけっこうあのドラマの影響を受けていました。もっと酷いのは『女の寿命はクリスマスケーキと一緒』なんていうのもあって、24、25歳が一番売れて、それ以降はどんどん売れなくなる。31歳以上はもうナシ、みたいな。

とにかく若いうちに好条件の男性と結婚するのが正解、という一つの不動の価値観があって。27歳までに結婚しないと終わる、と本気で思い込んで、いろんな男性を延々と値踏みしてたんです。年収や勤務先、学歴や育ちとか、そんなのばかり気にして中身まではよく見てなかった」

筆者も静香さんと同年代ですが、たしかにここ10年、20年ほどで、結婚に対する価値観はかなり変わったと思います。もちろん仕事に邁進する女性もいましたが、ある程度経済力のある男性と結婚して専業主婦になることが、今よりもずっと価値の高いものであった印象。

それを目指して必死になっていたという静香さんの気持ちは、悲しくも理解できてしまいますし、そのような焦りを感じた経験のある女性は少なくないのではないでしょうか。

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「夫を好きでない事実には気づいてしまいましたが、でも生活に支障はなかったので、やっぱり30歳までに子どもを作らなくちゃ、となり妊娠・出産しました。もちろん娘を授かったことは本当に嬉しかったし、子どもを産んでよかったという気持ちに嘘はありません。

ただ、事あるごとに私の母親が『子どもはまだなの?』『早くしないと産めなくなる』『私も体力がなくなるから手伝えなくなるよ』などと急かされていた背景もあり、このときもまだチェックリストに印を付ける感覚はありました」

 

ちなみに静香さんは三姉妹の長女であり、子育て経験豊富なお母様は、産後は積極的に育児を手伝ってくれたそう。けれど子育ては、静香さんの人生で初と言えるほど、苦労の連続でした。

「娘は本当に可愛いし、唯一無二の存在です。でも、批判承知で言いますが……出産や子育ては、私にとって、これまで思っていたほど“尊いもの”ではありませんでした。