アリエル役のハリー・ベイリーはアリエルのマインドを持った女優


黒人がアリエルを演じることについての議論は、日本でも白熱しました。その中で気になったのが、「多様性に配慮しすぎ」「ポリコレだ」といった言葉です。
果たして、黒人の俳優を起用することは、”多様性に配慮しすぎ”なのでしょうか?もちろん、批判する人の中には、もともとアリエルは白人なのだから、原作に忠実にしてほしいだけ、という人もいるかもしれません。しかし、実写化するときに演じる人が白人であることは外せない条件なのでしょうか?

※ポリコレ:ポリティカル・コレクトネス(political Correctness)の略。差別的な表現をなくし、政治的・社会的に公正で中立的な表現をしていこうとする動き。

「多様性に配慮しすぎ?」実写版『リトル・マーメイド』の反応に抱く違和感「多様性は配慮するものではなく、すでに社会にあるもの」_img0
「リトル・マーメイド」 6月9日(金)全国劇場にて公開
© 2023 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved. 配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン

監督/制作のロブ・マーシャルは、アリエル役のキャスティングに関して、次のようにコメントしています。

私たちは単にこの役にベストな人材を探していただけ、それだけのことですよ。あらゆるタイプの、あらゆる人種の候補者に会いました。そこに意図はまったくありませんでした。監督として一番望ましいのは、(オーディションに)やってきた役者が「これは私のための役だ」と主張しているかのようにピッタリとハマることですが、ハリーの場合がまさにそれでしたね。
 

決して、多様性に配慮して、黒人を起用しよう! と意図してハリー・ベイリーをキャスティングしたわけではありません。ハリー・ベイリーがアリエルというキャラクターを実写化する時に、もっともふさわしいと感じたからなのです。

「多様性に配慮しすぎ?」実写版『リトル・マーメイド』の反応に抱く違和感「多様性は配慮するものではなく、すでに社会にあるもの」_img1
「リトル・マーメイド」 6月9日(金)全国劇場にて公開
© 2023 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved. 配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン

もちろん例えば黒人が差別されてきた歴史について描いた映画で黒人役を白人が演じるとか、キャストの人種に必然性があるものを無理に他の人種の人が演じるのはダメでしょう。しかし、『リトル・マーメイド』の場合、アリエルを構成する外せない要素に人種がなかったというだけなのではないでしょうか。アリエル役のハリー・ベイリーは他の部分での要素を持っていたのです。

ハリー・ベイリーも、アリエルと自身の共通点について次のように述べています。

アリエルは情熱的で、ものすごく知恵をもっているし、あの年齢にそぐわないほど賢いわ。彼女は自分が何を欲しているのかわかっているし、けっして引き下がろうとはしないの。このストーリーと私自身にはとても似たものを感じているわ。私たちはどちらも似たような人生をたどっているし、私は彼女からものすごいインスピレーションをもらっている。彼女のおかげで、物おじせずに自分の考えを言えるようにもなったしね。

アリエルは確固たる「自分」という軸を持っていて、周りが何と言おうと、自分の心が惹かれる方に全力で突き進み、運命までも変えてしまいます。そして周囲を動かしていくのです。そんなアリエルの「精神性」とハリー・ベイリーのマインドがシンクロしたようです。