「同僚が使った食器を洗い、食事の時間も取れない…」女性のリアルな経験談から生まれた映画『アシスタント』の衝撃_img0
『アシスタント』 6月16日(金)新宿シネマカリテ、恵比寿ガーデンシネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開 © 2019 Luminary Productions, LLC. All Rights Reserved.

 架空の映画会社で働く新人アシスタントの一日は、ハラスメントだらけだった――映画『アシスタント』は87分間の中で静かな衝撃が何度となく起こります。職場ヒエラルキーの末端で働く人々が経験する、あるある話がとにかく多い。わざとらしい演出が一切ないのがこれまたクール。主演のジュリナ・ガーナ―の目で演技する技にも圧倒されながら、自分ごと化が止まらない作品なのです。

 

描かれるのは、誰もが経験したことのあるハラスメントの数々


新人アシスタントのジェーンが会社に向かう時間はまだ夜明け前。さぞかし特別な忙しい1日が始まるのかと思って見進めると、どうやら違うらしい。殺伐とした職場で電話対応にコピー取りといった事務作業から、会議後の片付けなどあれこれ細かな雑用まで淡々とこなす彼女の姿が延々と映し出されていきます。Netflixのヒット作「令嬢アンナの真実」で憎たらしい役どころを見事に演じたジュリア・ガーナ―が、オーラを一切排除して覇気を失ったジェーン役を全うしているのもひしひしと伝わってきます。


ジェーンの職場はアメリカ・ニューヨークにオフィスを構える有名エンターテインメント企業という設定で、華やかなのはイメージだけだったりするエンタメ業界の現実を見せているわけですが、映画『アシスタント』が切り込みまくっているのは職場で常態化しているハラスメントです。これってハラスメント? というような無自覚になりがちなものから、明らかにレッドカードものまで、あらゆる職場ハラスメントがジェーンのとある1日の中に巧みに組み込まれているのです。

「同僚が使った食器を洗い、食事の時間も取れない…」女性のリアルな経験談から生まれた映画『アシスタント』の衝撃_img1
『アシスタント』 6月16日(金)新宿シネマカリテ、恵比寿ガーデンシネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開 © 2019 Luminary Productions, LLC. All Rights Reserved.

職場ヒエラルキーの最下層にいるジェーンと同じ経験を味わったことがあったり、今まさにそうだったりすると、いちいち共感できます。同僚たちが使った食器を洗う仕事までまるで当たり前のようで、気づけば朝から夜まで食事の時間もまともに取れないことに疑問すら生まれない状態なのです。名門大学を出て、映画プロデューサーになることを夢見るジェーンにとって今は踏ん張りどころ。なんて思うこと自体、昭和の考え方なのかもしれません。

ジェーンは上司にあたる会長の理不尽な要求にも応えていきます。少しでも会長の機嫌を損ねると「もう2度とあなたを落ち込ませることはしません」という謝罪文を強制的に送らなければならない始末。感情を押し殺しながら1日に2度もそんな謝罪メールを書かねばならないジェーンに、追い打ちをかける出来事まで起こります。会長のセクハラ疑惑です。