日本って、こんなに人権が守られていない国だったんだ……。
『武器としての国際人権 日本の貧困・報道・差別』(集英社新書)を読んで筆者はそう感じました。「国際人権」の基準で、日本政府がどのように人権問題に取り組んでいるのか(というか、どれほど人権を蔑ろにしているか!)、日本の現状を詳らかにする一冊です。

先日、5月30日の参議院法務委員会で日本維新の会の鈴木宗男議員が「国益なくして、私は人権もないと思っております。人権だけ、優先してもですね」と発言した出来事をご存じでしょうか。筆者はこの発言、かなり衝撃的でした。人権はすべての人が尊厳を持ち、人間らしく生きていくため、そして社会が存続していくために最も重要なものであるはずですが、政治家がその人権を正しく理解していないことに愕然としました。

人権という言葉自体は誰もが知っているものですが、それがどういうものなのかを正確に認識している人は多くないのではと思います。改めて「人権とは何なのか?」について、『武器としての国際人権 日本の貧困・報道・差別』の著者であり、国際人権法の法学博士でもある藤田早苗さんにお話を伺いました。
 

人権とは「人間らしく生きるために必要な権利」

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――「人権」とは何かと聞かれたら、なんとお答えになりますか?

 

藤田早苗さん(以下:藤田) 「これがなかったら人間らしく生きられないよね」というものがいろいろあると思うんですね。例えば、人間らしく生きるためには、まず衣食住がないといけません。それだけじゃなくて、自由に移動できることも大事です。教育を受けること、自由に物を言えること、身体拘束されないこと、尊厳が認められないような扱いを受けないこと。その権利が人権です。

私たちは毎日、気づかないだけで人権を行使しているんです。守られているというか、享受しているともいえるかもしれません。一方で、入管施設の中の人とか、車椅子の方など、みんなが当たり前のように享受している移動の自由が剥奪されている人もいますよね。そういう場合、人権が守られていない。

ただ、全ての権利が人権ではないです。これはちゃんと覚えておいてください。権利の中の本当にコアな部分、「人間らしく生きるために必要な権利」を人権と言うのであって、何でもかんでも「人権」なわけではありません。