データを見るだけでは若者の実像は掴めない


——月に約200人の若者に会っているそうですが、若い世代と接する上で気を付けていらっしゃることってありますか。

長田麻衣さん(以下:長田):aroud20(15歳~24歳)の子たちとは5年ぐらい関わっていますが、最初は同じ目線になることを意識していますね。お姉さんすぎるとちょっと緊張しちゃうじゃないですか。本当に普通に友達と話す感覚で話すようにしています。あとはあんまりZ世代だからと決めつけずに、その子にちゃんと向き合うようにしています。
トレンドだったり、使ってる言葉とか、みんなにとっての当たり前のことでつまずかないように流行りのものをインプットしていくというのは意識していますね。もし知らなくて「何それ」みたいに言ってしまうと、確実にジェネレーションギャップが見えてしまうので。SNSも放っておくとおすすめがアンチエイジングとか、自分の世代向けの情報が出てくるので、高校生をフォローしていいねをすることでアルゴリズムを矯正しています。

 

——長田さんは若者の生の声に触れることを大切にされていますよね。ビッグデータを見るだけでは若者を捉えられないと思ったきっかけはどんなものだったんでしょうか。

長田:SHIBUYA109に来ている子たちの調査をしたことがあります。定量的にやっていくとGUとか、ユニクロ、H&M、Forever21などのファストファッションがすごく人気という結果になりました。でも、Forever21の中にも、いろんなテイストがありますよね。それにすごくおしゃれが好きな子達だから、白米みたいな服はファストファッションで揃えても、メインのおかずのような服は他で買っているはずだと思いました。データからだと、そういうところが見えてこなかったんです。

企業の考える「若者像」は10年前で止まっている?SHIBUYA109は大幅にリブランディングされてどう変わったのか_img0
写真:Shutterstock

長田:そこで実際にインタビューをしてみました。やっぱり好きなブランドとかよく買うブランドは何かと聞くと、「GU」と答えるんです。「でも、おしゃれが好きで人と被りたくないって言ってたじゃん? 被らないための服はどこで買うの?」と聞くと、そこでやっとブランド名が出てくるんです。あと、「今日着てる服はどこで買ったの?」と聞くと、「ZOZOTOWNです」という答えが返ってきて、通販サイトの名前は出てくるけどブランドの名前が出てこなかったり。「SHIBUYA109の7階のこっちらへんにある店で買いました」といった感じで、よくSHIBUYA109に来ている子でも、お店の名前を言えないこともあったりします。みんなにとってブランドってそんなに大事ではないんだということは話を聞いてく中で気づいたことです。やっぱりちゃんと生の声を聞いていかないと、そういった細かい傾向までは見えてこないと感じました。