休憩中にサービスエリアで食事をしたバス運転手にクレームが寄せられたという話がネットで拡散するなど、顧客によるハラスメント問題が一向に改善しません。この問題を解決するには、なぜこうした事態が発生するのか、根本的な部分についてもっと考える必要があります。
このケースは高速バスの運転手が休憩中にサービスエリアでカレーを食べたところ、乗客からクレームがあったという話です。4時間半の長時間運転ですし、そもそも休憩中の行動は自由ですから、このクレームが非常識であることは言うまでもありません。しかし報道によると、その運転手は、クレームがあったことだけでなく、クレームを受けた会社側の対応にも不満を持っているようです。
筆者は企業を経営した経験がありますし、コンサルタントして多くの現場を見てきましたからほぼ断言できますが、過剰クレームで従業員が著しい被害を受けるケースのほとんどは会社組織に何らかの問題があります。会社全体として、過剰なクレームには毅然と対応するという合意が出来ている場合、社員は粛々とチームで対応するので、大抵の場合、クレーマーは退散します。
しかし責任の所在がはっきりせず、上司が仕事を部下に押しつけることがまかり通っているような組織では、クレームを受けた本人が放置されてしまいます。周囲が助けてくれないばかりか、挙げ句の果てには、「君の対応が悪い」などといって被害者の責任にされてしまうことさえあります。つまりクレーマー問題の敵は社内にも存在しているのです。
困ったことに、この問題は時間が経過すると、別な形で被害が顕在化することもあり得ます。どういうことかというと、顧客の暴言で従業員が被害を受けるという図式は、今、そうなっているだけで、以前は違っており、今後も形を変えて別なところで発生する可能性が考えられるのです。
ハラスメントによる被害というのは、基本的に立場の強い人が、その立場を利用して下の人を圧迫する図式で成立します。立場が強い人、弱い人という関係性が作り出されること、あるいは、それによって弱い人が厳しい立場に置かれてしまう構造そのものに問題があるわけです。この部分を見過ごしてしまうと事の本質を見誤ります。
今でこそ、顧客が従業員に暴言を吐くことが問題視されていますが、以前はまったく逆の被害が社会問題となっていました。
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