こんにちは、ブランディングディレクター行方ひさこです。

先日、尊敬する食のライターさんからお誘いいただき、想像をひと回り以上も超える感動の食体験をしてきました。今回は、そんな感動のお裾分けと詳細を。

 

場所は、東京エディション虎ノ門のレストラン「The Jade Room + Garden Terrace (ジェイド ルーム + ガーデン テラス)」。史上最年少26歳の若さでミシュラン2つ星を獲得した、世界中で人気レストランをプロデュースしているスターシェフ、トム・エイキンズがパートナーシェフ、リチャード・マクレランがシェフ・ド・ キュイジーヌとして腕を振るっています。

 

地上140mですが、テラスには緑がたくさん! お庭のような居心地の良さと、目の前は東京タワーという、どうだ! ザ・東京だ! というなんともラグジュアリーなシチュエーションで、「テロワール・日本」の初回フィーチャーエリアである北海道の「余市」を堪能してきました。

美味しい海産物はもちろんのこと、食材も質の高いワイン生産者が多いことでも知られる余市。入手困難なものばかりだと噂に聞いていたので、もう、余市ワインを飲めない人生でも仕方がないと少し諦め気味でしたが、まさかこんな機会をいただけるなんて! 生きていると、何があるか分かりません。

 

えんどう豆と雲丹のスナックから始まるコースは、5品のコース。そして、1品1品それぞれに、ヘッドソムリエ矢田部匡且さんによる渾身のセレクションで、最高に合うワインのペアリング。矢田部さんは、休日は日本各地のワイナリーや酒蔵に足繁く通い、造り手からその土地の文化や社会的背景をしっかりと聞き出し、その想いをゲストにしっかり届けてくれます。

もう、最初からお祭り気分に。この小さなスナックは、エンドウ豆のカスタードに余市産の雲丹を使用したクリーミーなソースを重ね、フレッシュな雲丹とエンドウ豆、香り高い三つ葉オイルが乗っています。直径5.6センチ、深さ3センチほどのボールの中は、恐ろしいほど複雑性のある嬉しいハーモニーが奏でられていました。

そこに合わせて出していただいたのは、「LOWBLOW CRAFT Local Independent Winery」の「余市産ナイアガラ100%」。このペアリングのために、なんとか1箱だけ取り寄せることができたというありがたいお話を聞きながら、ぐびぐびっと。アルコール度数9%と軽めな上に、透き通るような爽やかさが駆け抜けて、何杯でもいけてしまう。でも、貴重なワインすぎて恐れ多い………。

そこからも、次から次へと日本のワインって、余市のワインってこんなに素晴らしいんだ! と驚きとため息が続くことに。

平川ワイナリー」の「INTUITION」は、まるでブルゴーニュのシャルドネを飲んでいるよう。ワイン教室に通ったにもかかわらず、ソムリエ試験に2度も落ちた苦い過去が蘇る……(1回目はあと1点だったのに、翌年2回目は遅刻して失格という、人として恥ずかしい過去)。それにしても、ブラインドで飲んだら絶対に日本のワインではなく、定価が3倍から4倍くらいのブルゴーニュだと思ってしまう、そんな複雑みがあり、豊富なミネラルやフレッシュ感が感じられるワインでした。

 Yoichi muller」は、2021年からスタートしたばかりのワイナリー「山田堂」のもの。心が震えるようなワインとの出会いから余市町に移住してきたんだそう。日常に楽しんでもらえるテーブルワイン、食事の邪魔をしないけれど個性的で、日々の食卓が華やかになる、そんなワイン造りを目指されています。みずみずしく華やかな香りと控えめな樽の香り、体にスッと馴染むような優しく柔らかい味わいで、これまたゴクゴク系(笑)。

もう1つ印象的だったのは、「ドメーヌ・モン」のフラッグシップ「Dom Gris(ドングリ)」。葡萄畑が位置する地区が余市町登町の「楢の木台」と呼ばれていて、コナラやオオナラの木が多く茂っている場所。どんぐりの森に囲まれて育ったピノグリだから、どんぐり! という遊び心たっぷりのネーミング。畑の周辺の自然を感じながら飲んでいただきたいという想いも込められているそうです。そして、こちらは接木なしの自根(Dom Grisの後のJKの文字に注目!)バージョンという、とてつもなく貴重なものをいただきました。

今回のコースにはないのですが、レストランのシグネチャーメニューのオニオンカスタードを合わせていただきました。麦味噌、グリルしてくたくたに柔らかくなった玉ねぎの甘みと、麦味噌と大麦、北海道のチーズを使用したカスタードソースが本当に絶品。そして、Dom Grisワインとの相性も神! でした。これに合うワインはこれしか考えられない、とソムリエの矢田部さん。いつもは日本酒をペアリングとしてお出ししているそうです。

脂という認識ができないほど繊細すぎる余市北島豚をバーベキューでスモーキーに仕上げ、凝縮させた豚のソースに蕪のクリームと加賀きゅうりの塩漬けとパウダーを添えたメンディッシュには、かの有名な「ドメーヌ・タカヒコ」の「ナナ・ツ・モリ」をペアリング。かつて、7種類の果樹が育つ森だったことから、その畑の歴史を伝えるためにナナ・ツ・モリ(七ツ森)と名付けられました。自分たちは醸造家ではなく農民である、自然と向き合って話し合える感性を持ち、継続可能でなければならないと。その土地や風土、文化へのリスペクトを深く感じながら、いただきました。

さくらんぼを使用した可愛らしいビジュアルのデザートと、「NIKI Hillsワイナリー」の「はつゆき」というロマンティックなペアリング。NIKI Hillsワイナリーのサイトを拝見すると、プライベートワイナリーツアーをはじめとし、ネイチャートレッキングツアー、ガーデンツアー、トレッキングツアーと季節ごとに土地を感じることができるツアーが用意されていました。ここでも土地へのリスペクトを強く感じます。

全てのお料理をご紹介はしていませんが、お料理のポーションがどれも完璧! ワインのアルコール度数も少し低めだからか、最後まで美味しくいただけて、体も軽い! お料理が多いと、もう少しワインが欲しいなーと思うこともありますが、本当に完璧でした。もちろん、美味しすぎておかわりしたかったのですが。

ご紹介させていただいた「テロワール・余市」は、7月31日(月)まで開催中! で、 4品コースのランチもあります。この感動をぜひ! ペアリングのワインは状況に応じて変わるとのことなので、必ずしも私がご紹介したものが出るとも限りません、ご了承くださいませ。

今回も最後までお読みいただいて、ありがとうございました。
 


写真・文/行方ひさこ
 

 

前回記事「夏に欲しい「ガラスのうつわ」作家・艸田正樹さんがつくる作品は圧巻の美しさでした」はこちら>>