ドラマ「アンフェア」シリーズの“薫ちゃん”や、連続テレビ小説 「まんぷく」の奇妙な英語を話す喫茶店マスター役などでもおなじみの加藤雅也さん。二枚目&ダンディなおじさまかと思いきや、パーソナリティを務めるラジオ番組では、気さくな関西弁であれこれ話し倒す一面も。

そんな加藤さんが演じる役柄は、復讐の鬼と化すヤクザ者(『許されざる者』2003年)、ストリップ劇場の社長(『彼女は夢で踊る』2019年)、ゲイバーのママ(『さくら』2020年)、世界的マエストロ(「リバーサルオーケストラ」2023年)、そして地球防衛隊司令部参謀長(テレビ東京系で7月8日(土)より放送開始の「ウルトラマンブレーザー」)と幅広い。

7月7日(金)公開の映画『1秒先の彼』では、主人公ハジメ(岡田将生)の父親・平兵衛役。ハジメの少年期に、「ミョウガとパピコ」を買いに行ったきり消息不明となった、物語のキーパーソンを演じています。

平兵衛の衝撃の登場シーンの裏話や、結婚や仕事を選択する上での覚悟と責任、そして二枚目俳優からの変遷などを、たっぷり聞きました。60歳でもなお意欲的に仕事を「おもろがる」姿勢に、真の「イケオジ」を感じました。

 


物語のその後は観た人が好きに想像すればいいし、それはその人の人生観で変わってくる。僕はそれが映画だと思う


ーー平兵衛は、蒸発直前に息子のハジメ(岡田将生)と会話を交わすシーンで登場します。夕食のそうめんのために、ミョウガを買ってくる、と外に出たところを、ハジメに呼び止められ、パピコを頼まれる。そこで口から出ていたそうめんをスススーッと吸い上げる。あの表情と動作で、平兵衛が限界まで追い詰められて衝動的に蒸発したのかな、という印象を受けました。あと、可愛げのある人だなとも。あのシーンはどのように作られたのでしょうか?

脚本に「そうめんをすする」とあったと思います。(山下敦弘)監督がわりとそうめんの見え方にこだわっていて、「太めにしよう」「1本だとわかりにくいから2本の方が見えるんじゃないか」という話はしました。

ーー2本でしたね(笑)。

僕はそれをすすっただけ。平兵衛の心理をどう捉えるのかは、お客さんに委ねていいものだと思っています。最近は、説明過多の作品も多いように感じます。だから今回のエンディングなんかも秀逸で、僕は大好きです。ハジメとレイカ(清原果耶)のその後は観た人が好きに想像すればいいですし、それはその人の人生観で変わってくる。僕はそれが映画だと思うので、今回は久々に蛇足のない、いいエンディングだなと感じましたね。

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