「非常に一途」「絶望しない」まっすぐな性格は、人によっては脅威に
矢田部教授からすると、富太郎はかなりの脅威だったでしょう。失う名誉もない上に、行動力は人一倍持ち合わせていますから。しかし、抵抗もむなしく富太郎は研究室を追われ、故郷の高知県・佐川町に帰ります。それは実家の家財を整理するためでしたが、財産を食いつぶした張本人である彼は、そこでもまた散財したといいます。
「学問には財産を使い尽くすことになった富太郎ですが、それ以外の場面では遊び呆けて家を潰す、いわゆる『放蕩息子』ではなかったと思います。非常に一途な性格だったのでしょう。酒蔵の息子なのに、酒は全く飲まなかったそうです。とにかくひたむきに努力をし続けました。絶望しないのが富太郎の強さなのでしょう」
「非常に一途」「絶望しない」──富太郎を支えていた家族にとって、そのまっすぐすぎる性格はたくましい反面、少し怖いものだったかもしれませんね。ただ、苦難に正面から向き合い、逃げなかった富太郎のもとにご褒美ともいうべき幸運が訪れます。
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