いじめや虐待など、子どもを取り巻くさまざまな問題が話題になる昨今。市民同士の繋がりが薄れつつある今、信頼できる大人、相談できる人がいない、誰にも頼れない……。そんな子どもの孤独・孤立が大きな問題になっています。児童精神科医の小澤いぶきさんが代表をつとめる認定NPO法人PIECES(ピーシーズ)は、子どものウェルビーイングの実現を目指し、子どもの心の孤立の解消に取り組んでいます。そして、子どもの孤独・孤立を解消するために、市民向けオンラインプログラム「Citizenship for Children」を開催しています。今回は小澤さんに、子どもの孤独・孤立の現状についてお聞きしました。
小澤いぶきさん
認定NPO法人 PIECES代表理事/児童精神科医。精神科医を経て、児童精神科医として複数の病院で勤務。トラウマ臨床、虐待臨床、発達障害臨床を専門として臨床に携わり、多数の自治体のアドバイザーを務める。
「子どもたちが誰かに頼れない」ことから生まれる、心の孤立
――子どもの孤独・孤立とは、一体どういうものなんでしょうか。
小澤いぶきさん(以下、小澤):子どもの孤立とは、安全で安心して頼れる人や関わりや物理的な環境がなかったり、あっても物理的、心理的様々な背景によりアクセスが難しかったりする状態です。孤立という状態は誰にも起こり得ます。ただ、このような孤立の状態が続くことは、時に、ウェルビーイング(身体的にも精神的にも社会的にも満たされているような状態)、例えば、「自分がここにいて大丈夫だ」「自分の声が聴かれている」「明日も大丈夫だ、この先に希望が持てる」といったことが感じられるかどうかに影響するのではないかと思います。また、子どもの権利に基づいたウェルビーイングな環境がまだ醸成されていないこと自体が、孤立を生み出しやすくしてもいます。
子どもの現状を様々な調査から見てみると、ユニセフのレポートで見る日本の状況は「精神的幸福度が38カ国中37位」、厚生労働省の自殺対策白書では「10代の死因の中で1位が自殺」、また成育医療研究センターの調査では「小中学生の約10%に鬱症状があって、10%以上の子どもが直近1週間に死にたい気持ちを感じたり、実際自分の体を傷つけている」といった現状があります。
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