小論文問題を解説したらすぐに書いてもらう


では、僕が女子商で実践してきた指導方法について、簡単に紹介します。

僕の小論文指導では、大学が実際に試験で使った小論文の問題を徹底的に使います。年間100問以上に目を通し、その中から社会問題の繫がりを意識しながら問題をセレクトします。

初めの頃はセレクトした問題文に対する解説をした後、生徒たちに文章を書いてもらいます。

通常の小論文指導であれば参考書をベースにしながら、経済・環境・法・国際関係などのようにトピックごとに社会問題の知識をある程度入れた後に問題を解いていくという形を取る学校が多いと思います。しかし、僕の指導は実際の過去問の課題文を読みながら社会問題に触れ、その後すぐに生徒たちが書き上げるという形でアウトプットを図ります。

この方法には、いくつかのメリットがあります。

まず、知識の定着が早くて効率が良いこと。生徒たちにとっては解説の後にすぐに文章を書くのがわかっているので、僕の解説に対して能動的に考えながら構成を図ることでインプットの質が高まるという効果も期待しています。

生徒たちに書いてもらった後に、僕がすぐに添削をします。添削では赤ペンで書き込みながら指導をする先生方が多いと思いますが、僕はあまり文字に残しません。

これは高校生に限らず大人にも当てはまると思いますが、自分が時間をかけて書いた文章が毎回赤だらけで返却されると、文章作成自体に苦手意識が生まれるのが自然だと思います。

「この具体例はどこに繫がっているの?」「なるほどね、だったらこの接続詞の方が伝わるかもね」というように口頭で説明したものを生徒たちがメモを取り、必要であれば改めて書いてくるような方式です。

写真:Shutterstock

僕の添削の特徴はとにかく褒めて返すこと。「できた」と思ってもらえることで、生徒たちにとって小論文を解くことへの抵抗感を軽減し、自分の意見が伝わることの喜びを感じてもらうことに力点を置いています。

また、添削時間は一人3分程度。一度の小論文で訂正する箇所は1ヶ所か2ヶ所。だいたい大学の合格ラインを把握しているつもりなので一度の添削で直そうとはせず、長期的な視点で考えています。

 

初めの頃に出す小論文問題は、どこの大学のものかを説明せずに生徒たちに解いてもらうことが多いです。

最初のテーマとしてわかりやすいものを僕が選んでいるのですが、たまに難関大学のものもあります。

僕が二重丸をつけた後に、「実はこの問題慶應大学の問題だよ、もしかしたら小論文ならいけちゃうんじゃない??」などと生徒たちに声をかけると、勉強に対して苦手意識を持っていた生徒たちの顔がみるみる変わってきます。

ひとつのテーマでインプットとアウトプットを一緒にやっていく。解答を書いてもらった後はすぐに添削をする。これを6月から夏休み中まで繰り返していきます。