10代の死因の中で1位が「自殺」――。いじめや虐待などが度々話題になりますが、信頼できる大人、相談できる人がいない、誰にも頼れないという状態で、問題を一人で抱え込まざるを得ない現状があるといいます。子どもの心の孤立の解消に取り組む認定NPO法人PIECES(ピーシーズ)代表で、児童精神科医の小澤いぶきさんは、子どもの孤独・孤立を解消するために、市民向けオンラインプログラム「Citizenship for Children」を開催しています。今回は小澤さんに子どもの孤独・孤立を解消していくために必要なことについてお聞きしました。
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小澤いぶきさん
認定NPO法人 PIECES代表理事/児童精神科医。精神科医を経て、児童精神科医として複数の病院で勤務。トラウマ臨床、虐待臨床、発達障害臨床を専門として臨床に携わり、多数の自治体のアドバイザーを務める。
「頼っても意味がない」という体験の影響
――信頼できる大人がいないという状況で育った子どもたちは、どんな影響が出てくるのでしょうか。
小澤いぶきさん(以下、小澤):人間は、自分が大切にされた体験があって、自分を大切にすることを知っていくのではないかと思います。その過程の一つが、「誰かに頼る」ことだと思うんですね。困った時に誰かに頼ることというのは、自分を大切にすることの一つともいえます。ただ、その「誰かに頼る」のが難しくなることもあります。
例えば、頼っていいことを知らない、頼りたい安全な大人が身近にいない、という状況もその一つです。また、大人側が何回も子どもに対して信頼を損なうような行動をしてしまったり、大人が子どもの声をちゃんと聴かないような環境が積み重なったり、大人が子どもの言ったことを一方的に判断したり、否定したり、子どもにとって心の傷を深めるようなことが起こったりすると、子どもは大人を信頼できなくなることがあります。
そういったことが重なっていくと、「頼る」ということに対して、「自分を守る一つの方法として人に頼らない」「頼っても意味がない」という意味づけが生まれることがあります。「学習性無力感」という言葉があるんですけれど、「どんなに頑張っても助けてもらえることはない、声が聴かれないんだ」ということを私たち大人や社会のあり方や態度、関わりから経験的に学でいったりもします。結果、何かしんどいことや困ったことがあった時、自分一人でなんとかする対処方法を工夫して見出していくこともあります。それは、その人の大きな力でもあります。
一方でそのような状況は、例えば、突然自分に車が突っ込んできて、複雑骨折したあとに、複雑骨折を一人でなんとか癒しながら、そこに対する保障もなく、手助けもなく、そんな中一人でなんとかしていく状況ともいえます。一人で抱える必要のないことを一人で担い、今日明日と現実を生きていく時、複雑骨折の痛みや過酷さを一時的に緩和しないと生き延びることも難しいことがあります。そのような時、アルコールに頼ったり、自分を傷つけることでの一時的な緊張からの解放に頼ることがあるのも自然なこと。ただ、それが続くとその人の心身の健康に影響が及び、その人がさらにしんどくなることがあります。
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