再び症状が迫ってきても、「来るなら来てみろ」の境地で切り替える


──休養から復帰して、10年ぐらい経ちました。今も相当ご多忙ですが、パニック障害の症状はもう克服したという感じなんでしょうか、それともうまく付き合っているという感じですか。

大江:やっぱり人ですから、コップの水が溢れるときがあるんです。薬飲んだからって治るもんじゃないです。自分の気持ちをどれだけリラックスさせて、過ごせるか。うまく付き合いながらですね。うまく付き合う方法として、「絶対死なない」と思えばいいんです。動悸がしたとしても、これ絶対に死なない、と思う。実際死ぬわけじゃない。心臓の病気じゃないんですから。「絶対死ぬことはない」と思った瞬間に切り替わるんですよ。休養していた時は家にずっといましたけど、外に出たら心臓がバクバクする、フラフラするという感じでした。でも、死ななかったですから。

「パニック障害は乗り越えるのではなく、うまく付き合うもの」演歌歌手・大江裕の休養から復帰までの道のり_img2

 

大江:もう来るなら来てみろという境地になったのは、復帰直後の公演でした。ステージに上がるときに、症状が出るんですよ。心臓がバクバクとなるんですけど、もう来るなら来てみろと思うと、自分に戻るんです。公演中、戦うわけです。脈が上がって怒ったときみたいにカーッとなるんですよ。あんまり上がりすぎたら血管が切れますから、ほどよい感じで。若いから血管も大丈夫だろうとか、自分に言い聞かせていました。その後、過呼吸になるんです。もう過呼吸で、歌えなくなるんですね。でも、吐き出すんですよ。過呼吸の時に歌うというのは大変ですよ。過呼吸と戦っていることをお客さんにわからないように歌うんです。もう舞台の袖でぐったりです。10年前、自分がパニック障害になった当時は、まだこの病気がそんなに知られていなくて、パニック障害になってもあんまり言わない人が多かったんですよ。自分はどんどん言っていきたいなと思いますね。追い詰められたり、悩んだりする方も多いですから。でも必ず自分に合った仕事もあるでしょうし、今いるところだけが自分の居場所じゃないっていうことを皆さんにお伝えしたいですね。自分の場合は歌手の道しかなかったんだろうなと思います。北島先生がいたので、引き留められたというか。自分が道を逸れそうな時に北島先生が引っ張ってくれたんです。

デビュー15周年記念第2弾シングル 『城崎しぐれ/愛をこめてありがとう』(8/2発売)新曲発売
今作は、兵庫県を代表する「城崎温泉」を舞台にした、演歌の王道"湯の町演歌"。今年デビュー15周年の大江裕、第2弾シングルの発売です。今作は、有馬・湯村とともに兵庫県を代表する「城崎温泉」を舞台に、忘れられない女性を訪ねてかの地を訪れる男の悲哀をマイナーのメロディーにのせた湯の町演歌です。カップリング曲は、ステージのエンディング曲で、「感謝」をテーマにした歌謡曲です。
 

取材・文/ヒオカ
撮影/日下部真紀
 

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