自分が正しいと絶対に譲らない優秀な父親


夫のほうは、私との面談に一度だけやって来ました。妻に言われ嫌々ながら、だったのでしょう。険しい表情で持論を語り始めました。

「仕事は管理職です。私の中のポリシーに従って人付き合いというか、人とのかかわりをすごく考えてやってきた。私が築き上げた人間関係のルールというものとは、娘は真逆の行動をしている」

そう言って、自分の娘がいかに間違っていて、自分が正しいかをとうとうと語るのです。

「娘が幼少期のころも、私が良かれと思っていることを伝えたり、注意しただけなのに、娘からは反抗されるし、妻からは虐待に近いからやめなさいと叱られた。まったく承服しかねる。次女は私が言ったことを聞き取ってそのように行動して、学校でもうまくやっている。それなのになぜあの子だけ許容してあげないといけないのか。全く理解できない。だから、これ以上長女を受け入れる気はありません」

そして、最後に言った言葉が衝撃的でした。

「この子が生まれることが予測できていたなら、私は妻と結婚しなかったと思います」

高学歴な親ほど陥りやすい「干渉・矛盾・溺愛」の子育てリスク。自分が子ども時代に受けた呪縛から逃れるには?_img0


衝撃発言の背後にある「生存者バイアス」


自分の価値観が絶対なのでしょう。自分と異なる意見に対し非常に頑なでした。

ほかにも、自分は親にスパルタで育てられたが、その教育のおかげでここまで来たという「生存者バイアス」がありました。サバイブ(生存)した、つまり何らかの苦しみを乗り越えた自身の感覚のみを基準として判断してしまうのです。サバイブできなかった側の気持ちを考えられないため、娘にも厳しく接していました。

その点は、高学歴で優秀な父親に見られる特徴のひとつでしょう。