作家・ライターとして、多くの男女に「現代の男女が抱える問題」について取材をしてきた佐野倫子。価値観が変化し続けるなかで、現代の夫婦問題を浮き彫りにします。

今回お話を伺うのは「ハードな生い立ちがゆえに息子の中学受験で暴走する夫と、子を守るために奮闘する妻」。

教育虐待というキーワードが取りざたされる昨今、果たしてどこからどこまでが「親の愛情」で、どこからが「行き過ぎた狂気」なのでしょうか。

そしてもし伴侶がその狂気に飲み込まれたとき、パートナーが取るべき行動とは?

「座ると寝るから、立って勉強しろ」深夜23時、中学受験塾終了後の特訓。妻が知る、夫の狂気スイッチ_img0
 

取材者プロフィール響子さん(仮名):43歳、会社員。
英太さん(仮名):45歳、税理士。


      
 

超有名中学に合格した息子の「衝撃的な反応」


誰もが知る有名な進学校に、かつて息子さんを通わせていたという響子さん(仮名・43歳)。ご夫妻の一粒種であるお子さんが、そのような有名中学校に入り羨ましい……と、呑気にも子を持つ筆者は考えましたが、伺ったお話は最初から衝撃的でした。

「息子はこの学校に合格したとき、全く喜ばず、それどころか『誰にも、絶対に言わないで。塾にも二度といかない。誰にも知られたくない』と部屋から出てきませんでした。実際に、小学校を卒業するまで誰にも進学先を告げませんでした。その時の彼の気持ちを考えると……私たちが――夫がしてしまったことの罪深さを改めて思い知りました」

果たして、響子さんの後悔と、夫・英太さん(仮名・45歳)の「暴挙」とはどのようなものだったのでしょうか?