時代の潮目を迎えた今、自分ごととして考えたい社会問題について小島慶子さんが取り上げます。

想像してください。自室で一人で仕事をしているとき、PCが突如壊れて、作成中の書類が全て消えてしまいました。さて、その時あなたの口から出るのはどんな言葉ですか。

 

私は「まじか! ざけんな、なんでだよ?!」です。もっと酷い事言うと思うけどそれは書かない。誰も聞いてない時に脊髄反射で出る言葉って、大抵そんな感じですよね。あれ、違うのかな。

では、周りに人がいる時だったら、どうですか? 別の言い方になるんじゃないでしょうか。なんというか、もうちょっと丁寧な、いや、上品な……。中には、いつどこにいても「まあ、なぜ? ひどいわ」って言う人もいるのかもしれないけど。

私の実家では、なぜか幼少期に母が「だよ言葉禁止令」を出していました。「女の子は、“わよ”と言いましょう」と。しかし娘たちは反発し、姉は頑なに「だよ」と言い続け、私も姉から借りたギャグ漫画で覚えた奇妙な言葉を率先して使うように。逆効果だったようです。

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たぶん昭和10年代生まれの母の世代では、いわゆる「女ことば」を使うのがちゃんとした女性という美意識があったのでしょう。古い映画なんか見ると、淑やかな女性が「そうですわ」「まあ、嬉しいわ」なんて言ってますもんね。
実家がどうであれ、大人になって働き出すとそれなりにまともなビジネス仕様の話し方が必要になるので、たいていの人は先輩の真似をしているうちになんとなく、失礼のないように話したり書いたりできるようにはなるものです。でも私的な場での話し方がお品の良さを表すという感覚は、まあなんとなく残っていますよね。

で、どうですか。あなたは言葉づかいがいいですか。