ゴールを先に見せる
伸ばせない親:簡単なことに時間をかける
伸ばす親:難しいことから先にする
難しいことから先にする
オリンピックやワールドカップといったスポーツ競技を見ていると気づくことがあります。それは、世界的な大会に出場するようなスポーツ選手は、たいていスポーツ一家に育ち、親も元アスリートであることが多い、ということです。
これは、飛び抜けた身体能力は遺伝で決まる、ということなのでしょうか? それもあるかもしれません。けれど、私はもっと大きな理由があると考えています。
アスリートの親が子育てで必ずしていること。それは、子どもに小さいときからその競技の「最終ゴール」を見せている、ということなのです。「まだ小さいから」「まだできないから」という先入観なしに、その競技で到達すべき地点――たとえばオリンピックやワールドカップ――を最初から具体的に見せている。「あなたはそこに行く人なんだよ」と見せている。だから、そこに到達するために必要かつ最短の道を小さいうちから選択できるのです。
ここには「世界で通用する英語の習得」にも通じる、1つの真実があると思います。
「ゴールを先に見せる」「難しいことから先にする」。これは、私が娘のすみれと実践した家庭学習でも、現在行っている英語レッスンでもモットーにしている基本です。だからこそ、英語の学習経験ゼロのお子さんにも、ABCの書き取りや歌やゲームはすっ飛ばして、いきなり長文読解までするようなロケット噴射型の英語学習を行っているのです。
なぜでしょうか? それは「小さいうちに英語を身につけさせるためには、インターナショナル幼稚園に通わせたほうがいいでしょうか?」という親御さんの質問に、私が「その必要はありません」と答えるのと同じ理由です。幼稚園の砂場で使う言葉は、大人になってからは使わないからです。
オンラインで世界中がつながっているこの時代、国内外のどこにいたとしても、英語で有用な情報を取捨選択し、英語で自らを発信できることが、お子さんが将来、いきいきと活躍するための鍵となります。そのとき、子どもが遊びで使う英語は、役に立たないのです。もともと周囲に自然と英語を話す環境があるネイティブの子どもとは違って、非ネイティブの子どもが、大人になってからは使わない言葉の習得に、わざわざ高いお金と時間を使うのはもったいないのではないでしょうか。
ロケット噴射型で子どもは伸びる
やさしいことに時間をかけずに、最初から子どもをロケット噴射で高いレベルまで持っていくと、そこからさらに伸びるようになる。この話をオリンピックや世界大会に出場経験のあるトップアスリートの方々の前でしたところ、とても共感していただけたことがあります。実際、彼らは幼少期から世界のトップを間近で見て、「小さいからできない」「難しいからできない」ということを考えることもなく、最初からチャレンジしているからです。
たとえば、2021年、東京五輪のサーフィン競技で銀メダルを取った選手がいます。
彼の親御さんは、3歳のときに息子さんがサーフショップでほしがった8万円のサーフボードを買い与えたといいます。これも、もし親御さんがそのとき「子どもにはまだ早い」という先入観にとらわれていたら、その後のメダリストは育たなかったわけです。
やさしいことから順々に進めていくやり方は、子どもにラクなように思えますが、長い目で見ると効率が悪く、子どもに無駄な努力を強いることになります。ゴール(難しいとを堂々とこなしている自分の姿)をイメージできないため、練習の退屈さや曲が進まないことを自分の限界だと捉えて、楽器を習うこと自体をやめてしまい、難曲にはたどり着けないままに終わることになりかねないのです。
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本書では他にも「子どもを幼稚な存在として扱わない」「家庭を安全地帯にする」など、「好き」と「得意」を伸ばす親がやっているルールが数多く掲載されています。
著者プロフィール
廣津留 真理(ひろつる・まり)
ディリーゴ英語教室主宰/株式会社Dirigo代表取締役/一般社団法人Summer in JAPAN代表理 事兼CEO。早稲田大学卒業。英語指導歴30年。大分の公立小中高から塾なしで米国ハーバード大学に現役合格した娘・廣津留すみれの家庭学習指導経験から確立した汎用性のある「ひろつるメソッド」でディリーゴ英語教室を運営し、これまでに数万人を指導、英検や難関大学合格に導く 。現役ハーバード生が講師陣のサマースクール Summer in JAPAN(2012~ )で多様性重視のグローバル教育を推進し、2014年経済産業省「キャリア教育アワード」奨励賞受賞。「徹子の部屋」「羽鳥慎一モーニングショー」(テレビ朝日系)などのテレビ出演で反響を呼ぶ。著書に、『英語ぐんぐんニャードリル ひろつるメソッド 最短最速! ゼロから一気に中2終了』『英語ぐんぐん ニャー単600 ひろつるメソッド ゼロから一気に中1終了』、 『成功する家庭教育 最強の教科書』(講談社)などがある。
『ハーバード生たちに学んだ 「好き」と「得意」を伸ばす子育てのルール15』
廣津留 真理 講談社 1650円(税込)
娘は塾なし家庭学習だけで地方公立からハーバード現役合格&首席卒業! ハーバード生たちと仕事する起業家の母が伝えたい、世界で通用する子どもの育て方。探究心を持って自分の「好き」を自ら学習する子。自分の得意を見つけて伸ばせる子。成長の過程で自己肯定感とコミュニケーションスキルを磨ける子。世界のどこに行っても自信を持って活躍できる子。そんな子どもを育てる親が「やっていること」「やらないこと」、そしてその取捨選択法を伝えます。
構成/大槻由実子
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