スポーツ漫画に登場する“監督”や“コーチ”と聞いて、あなたはどんなキャラクターを思い浮かべますか? 溢れんばかりの情熱で選手を勇気付けたり、時には怖いほどの厳しさで指導にあたったり……どこか気軽に近づけないような圧倒的なオーラを放っている像が浮かびます。だけど、時代が変われば監督やコーチのキャラクター像も進化する、今回紹介する『メダリスト』は私たちにそんな新しい指導者の形を見せてくれます。

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『メダリスト』(1) (アフタヌーンKC)

表紙のイラストからもうかがえるように、『メダリスト』で描かれる競技はフィギュアスケート。近年のオリンピックでは日本選手が相次いでメダルを獲得するなど、今や日本はフィギュアスケート強豪国です。熱心に応援している選手がいる! なんて方も多いのではないでしょうか。

 

本作では、そんなアツい注目を集めるフィギュアスケートをテーマに、オリンピック金メダルを目標に情熱を燃やす少女・いのりとコーチ・司の奮闘を描きます。

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実は、この司こそが従来のスポーツ漫画ではあまり見かけないタイプの指導者。まず、コーチといえば指導する生徒のことを呼び捨て(親しみを込めているのかもしれませんが)するイメージが強いなか“いのりさん”と呼ぶ。そして、どちらかといえば熱血漢タイプではあるものの、自分の意見を押し付けたり、高圧的な態度やきつい言葉でいのりを萎縮させることは決してありません。

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コーチと選手とは、教える、教わるという立場的に明確な上下や緊張感が生まれてしまう関係性。けれど、司はコーチという責務は全うしつつも、いのりを一人の選手として敬意を持って接し、対等な人間関係を築こうとするのです。

そんな司を形成するのは、思い出すと涙が滲む、少しほろ苦いスケーター人生。中学生という比較的遅い段階でフィギュアスケートの道を志し、なんとか全日本選手権への出場を果たすも、経済的にも実力的にも厳しく、アイスダンスへ転向……。けれど、そのアイスダンスショーのオーディションさえ受からない今。

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“行き着く現実に合わせて夢の形を変えてなんとか「フィギュアスケート」にしがみついている”
『メダリスト』1話より

これがスポーツ漫画の主人公だったら、突然才能が開花したり、何か奇跡が降ってくるのでしょうか……でも司には何も起きない。つまり、スポーツ漫画においては“じゃない”側のキャラクター、それが司です。

フィギュアスケートを諦めることはできない、でもこのままでは生活していけない。途方に暮れる司ですが、ある日名古屋のスケートクラブのアシスタントコーチにならないか? と勧誘されたことをきっかけに運命が動き出します。

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それが彼女、小学5年生の少女・いのりとの出会い。とにかくスケートが大好きだけれど、逆にそれ以外のことは全て苦手。勉強はもちろん、自分の思いを人にうまく伝えることもできません。

スケート選手になりたいという夢を密かに抱いているものの、特に身体能力が優れているわけでもないため自信がなく、さらに持ち前の性格上はっきりと親に夢を伝える子もできず……。こっそりとクラブに出入りしては、一人でスケートの練習に明け暮れる毎日を送っています。

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そんないのりとひょんなことから出会った司。フィギュアスケートの道を志すには少々遅い年齢であること、また気弱すぎる彼女を見て、最初は遠目で見守っている程度の司でしたが、いのりのスケートへの執念、そして氷上で見せた荒削りの才能に段々と心惹かれていきます。

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こうして、司はいのりのコーチになることを決意。夢破れた男の第二のスケーター人生が幕を開けるのです。

漫画の主人公のようにはいかない、“じゃない”側だった司のスケーター人生。そして、いのりも身体能力が高いわけでも、メンタルが強いわけでもない。つまり、彼女もまた“じゃない”側の人間です。

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“できなかった自分にしか拾えない気持ちがある できなかった自分だけが見つけられる才能がある”
『メダリスト』1話より

でも、“じゃない”側だからこそ共鳴するものがある。そして、そんな2人がタッグを組むことで起こせる奇跡があるのだと。『メダリスト』は、司という新しい指導者の形はもちろん、今まで見たことがない愚直でアツい夢追い物語を描いているのです。

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さて、そんな2人の夢はフィギュアスケートの選手になること……にとどまらず、オリンピックの金メダルを獲ること。“じゃない”2人を待ち受ける、氷上での激しく、過酷な戦いをぜひお見逃しなく。

 

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<作品紹介>
『メダリスト』
つるまいかだ (著)

人生ふたつぶん懸けて、叶えたい夢がある!夢破れた青年・司と、見放された少女・いのり。でも二人には、誰より強いリンクへの執念があった。氷の上で出会った二人がタッグを組んで、フィギュアスケートで世界を目指す!


<作者プロフィール>
つるまいかだ

漫画家。愛知県出身。『鳴きヤミ』で即日新人賞「in COMITIA123」優秀賞を受賞。2020年より「月刊アフタヌーン」(講談社)にて『メダリスト』を連載中。

 

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