突然ですが「モテる」ってどういった状態のことを指すと思いますか?モテメイク、モテ髪、モテ仕草……あんなに雑誌で具体的なHOWは目にしてきたのに、そもそもの定義を聞かれたら明確に答えられない!なんて方も多いのではないでしょうか。

今回紹介する『モテ考 30歳独身漫画家がマイナスから始める恋愛修業』とは、まさにそんな「モテる」について、作者の緒方波子先生が体当たりで検証し考察した一冊。ここまで読んで、いや、もうモテるとかそういうの良いんで……というあなた。実は「モテる」を掘り下げるということは「自分を知る」ことに繋がっている、本作を読んでいるとそんな新しい境地が開けるのです。


30歳独身漫画家、「モテる」と真正面から向き合う


そもそも緒方先生が「モテる」と真正面から向き合うことになったきっかけは、エッセイ漫画の連載でした。当時は30歳の独身、どちらかといえばインドア派の彼女のもとに担当編集から送られてきた連載企画案は……

(C)緒方波子/KADOKAWA

社会性も恋愛経験もない孤独な人という印象を持たれていると知った緒方先生は、なんとかその印象を払拭するために、モテてモテて困っちゃう(?)的な作品を描くと決意。早速、本屋でモテにまつわる本を買い込んで情報収集をしますが、説得力のないモテテクの数々にうんざりしてしまいます。

(C)緒方波子/KADOKAWA

ですが、この出来事をきっかけに「モテる」に対して、緒方先生の心に火がつきます。世間が提唱する「モテる」がそうであるなら、私の私による私のためにモテを考えよう!と。こうして恋愛経験も人付き合いも乏しい筆者の「モテる」を巡る破天荒な旅路が幕を開けるのです。

(C)緒方波子/KADOKAWA


見どころはロジカル思考と凄まじい行動力!?


この後、緒方先生は「モテる」と体当たりで向き合った結果、メイク教室や婚活パーティー(ここまではまだわかる)、果てはなぜか執事喫茶、そして断食道場へと足を運びます。こうして行き先だけ聞くと「どうしてそうなった」感が否めませんが、実はそこに至るまでの過程が気持ち良いくらいにロジカルなのです。

(C)緒方波子/KADOKAWA

例えば、独身や既婚の友人をゲストに迎えて「モテる」に対して議論する中で、自分にとっての「モテる」とは不特定多数の異性から好意を持たれることでも、仲良くなることでもないと定義した緒方先生。それなら、自分はどんな人から好意を持たれたいのか?と、自分に好意を抱きそうな属性の異性を箇条書きしてみたり。そもそも、なぜ好意に対してこんなに受け身なのか?と自分の根っこの部分と向き合ってみたり……。

時には、その凄まじい行動力によって爆笑必至な珍事が起こることはあれど、全ての行動の背景には一貫した緒方先生がモテについて考察した結果、つまり「モテ考」があるのです。

 

「モテる」の本質は他者ではなく、自分の中にある


果たして「モテる」とは一体何なのか……。余談ですが、歴史を辿ると語源は江戸時代の「持てる」からきており、「持てる」には「持ち得る」の意味があり、そこから「持ちこたえる」「支持される」と派生し、現在の「もてはやされる」「人気がある」の意味になったそう。

「モテる」という一連の出来事に自分以外の他者が介在することはあっても、何を以って「モテる」と定義するのか? 果たして誰にモテたいのか? ……そんな「モテる」の本質は他者ではなく、自分の中にあるのだ、と。本作を読んでいるとそう気付かされます。

果たして、緒方先生は「モテる」を巡る旅路の果てに何を見つけたのか?一緒に旅をするような感覚で最後までご覧ください!

 

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<作品紹介>
『モテ考 30歳独身漫画家がマイナスから始める恋愛修業』
緒方 波子 (著)

理想の男性は荒俣宏――そんな30歳女性漫画家である作者が「ひとりが気楽」とうそぶく人生にピリオドを打ち、彼氏を作るために動き出す! 野球観戦では明るいノリについていけず。理想の男性(荒俣度の高い人)を探そうとしては歴史民俗博物館をさまよう。執事喫茶ではチヤホヤされてうろたえる。メイク教室で、婚活パーティーで、文芸サークルで、果ては断食道場で! 作者は何を考え、何を見つけたのか。モテることの真理が綴られた奇跡の書。


<作者プロフィール>
緒方波子

漫画家。代表作に自身の婚活を描いたコミックエッセイ『モテ考 30歳独身漫画家がマイナスから始める恋愛修業』、続編『ラブ考』など。