稼ぐことはゲームで、幸せとは別物

介護事業は毎月赤字、それでも事業はやめない。ホストクラブ経営者が語る、「お金儲け」の向こう側にあるもの【手塚マキさん】_img0
 

――本当に色々な事業を展開されている手塚さんは、勝手ながら「仕事の虫」のようなイメージがあったのでとても意外な言葉でした。

手塚 僕たちって、知らず知らずのうちに「世の中の定義」に合わせて自分を抑圧していると思いませんか。一人でも全然ハッピーに過ごせるのに結婚を焦ったり、夫婦の関係性が壊れているのに家族であり続けることを選んだり。僕が「会社を潰してはいけない」と考えることも、ある意味そうかもしれません。働くことも同じで、世の中は「登り続けること」「稼ぎ続けること」を良しとするにもかかわらず、がんばりに応じた公平な評価システムがあるとは言い難い。

そんな中で毎日、不平不満を募らせているくらいなら、もっと楽しいことに目を向けた方がよくないですか。稼ぐことはゲームで、幸せとは別物。嫌なことはしないで、楽しいことだけする。そんな考えがあってもいいんじゃないかと思うんですよね。

――手塚さんがおっしゃっているのは、別に「働かない」ことがいい、ということではないですよね?

手塚 いや、本当なら僕自身は1ミリも働きたくないけれど(笑)、でもそうです。その日の食べ物を買うお金は、やっぱりビジネスというゲームで稼ぐ必要がありますけど、幸せを押し殺してまで、ゲームに勝ち続けなくていいということです。

 

僕たちはあまりにも「惑わされすぎていないか」

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――ビジネスというゲームには勝ち続けなくていいし、そこからはむしろ降りる道だってあると。

手塚 自分はこれができるとか、安定した組織に所属していることが幸せだ、安心だっていう価値観から、当然ながら降りる選択肢はありますよね。推奨するとかそういうことではありませんが、生活保護でも暮らしていけるんです。そこで人生が終わるわけじゃないし、幸せや豊かさは、お金とか仕事とは別のところにあるはずですから。

最近は、広告でも「作られすぎた美」に対して、いろんな意見が出てくるようになりましたよね。ティーンエイジャーに対して、ダイエットや整形を促すかのような美容広告が炎上したり、世の中も「なんかおかしいな」ということに気づき始めている。今まで「これがいい」と思い込まされていたものが、実は「作り込まれた虚像だった」と気づくことって、往々にしてあるわけです。「稼ぐことがすごい」というのも、長きにわたって社会醸成された一つの文化で価値観ともいえるけれど、僕たちはあまりにもその価値観に「惑わされすぎている」気がするんですよね。
 

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撮影/塚田亮平
取材・文/金澤英恵
構成/山崎 恵
 

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