電気代やガス代、ガソリン代は基本的に原油価格と為替市場の動向によって決まります。原油については、ロシアによるウクライナ侵攻によって一時、1バレルあたり100ドル台をつけるなど高騰が続いていましたが、今年に入って価格は少し落ち着きを見せていました。ところが主要な産油国の一つであるサウジアラビアが減産を行う方針を明らかにしたことから、この先、再び原油価格が上昇する可能性が高まっています。

原油価格が上がっても、為替が円高になればその分を相殺できますが、為替についても円高に転換する見通しは今のところ低いというのが実状です。

というのも、日銀はアベノミクスの中核的政策である大規模緩和策の継続を打ち出しており、今のところ政策を変更する姿勢を見せていないからです。大規模緩和策というのは意図的に物価上昇と円安を発生させる政策ですから、この政策が続く限り、ガソリン価格には上昇圧力が加わります。

このまま原油価格の上昇と円安傾向が続いた場合、年内に1リットルあたり200円を突破してもおかしくない状況と言えるでしょう。

写真:Shutterstock

一部からはガソリンにかかっている揮発油税(いわゆるガソリン税)の減税を実施すべきとの声も上がっています。ガソリン税についてはトリガー条項と呼ばれる仕組みがあり、1リットルあたり160円を超えた場合、税金の半額が免除されます。この制度は、現在、凍結されていますが、国会決議によって解除すれば機械的に1リットルあたり25円ほどガソリン代を安くできます。

 

この制度は2010年に当時の民主党が作り上げたものですが、当時、野党だった自民党がこの政策に反対していたこともあり、現在の自民党内部ではあまり積極的にこの政策を実施しようという動きは見られません。加えて、トリガー条項の凍結を解除して減税を行うと、地方自治体の税収が大幅に減りますから、その分の手当も必要となってきます。

政府は防衛費の大幅な増額と、子育て支援の拡大を表明したばかりで、予算の規模は膨らむ一方です。さらに補助の継続や減税などを行った場合、財源をどこから調達するのかという問題に突き当たるため、政府はなかなか決断に踏み切れません。

しかしながらガソリン代や電気代の高騰は、家計のみならず産業全般に極めて大きな悪影響を及ぼします。物価高騰が続いている現状を考えた場合、支援継続が必要となる可能性は高いと思われます。

※参考資料:東京電力エナジーパートナー株式会社「2023年8月分電気料金の燃料費調整等について」

 

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