自民党の森まさこ参院議員が自身のX(旧ツイッター)で、ブライダル業界への補助金事業の進捗を報告したことが波紋を呼んでいます。少子化対策として確保された予算をブライダル業界への補助金として使うことの是非に加え、森氏が業界から献金を受けていたと報道されたこともあり、利益誘導なのでは? という声も上がっています。

大炎上【ブライダル補助金】問題の本質とは?日本の政治は「予算を決めた後に使い道を考える」という悲しい現実_img0
国会 参院予算委員会で発言する森まさこ議員(2020年当時)。写真:つのだよしお/アフロ


このケースでは、本人がわざわざSNSでアピールしたことから、多くの人に知られることになりましたが、多くの政治家が国家全体のためというよりも、自身を支援してくれる組織のために動いています。

 

国会議員は選挙で選ばれますから、有権者に票を入れてもらわなければ、そもそも議員でいることができません。連続して当選できる議員のほとんどは、熱心に支持してくれる組織や団体を持っており、こうした人たちの基礎票がないと、安定して政治活動ができないというのが現実です。

しかし、特定の政治家をいつも熱心に応援してくれる有権者というのはそう多くありません。議員の誠実さや政策に賛同して支持するのが理想的ですが、熱心な支持者の多くは、やはり何らかの利益を期待しているわけです。そうなると議員は、自らの支持者の利益になるような政策ばかり立案することになりますから、お金の争奪戦となってしまいます。

政府が何らかの対策を行うために予算をつける際、中身が定まらないまま、先に金額だけが決まるというパターンをよく目にします。こうした予算の作り方に対しては、なぜ内容を固めずに金額ありきで物事を進めるのかといった批判が寄せられるのですが、こうなってしまう最大の理由は、それぞれの議員が自身の支持基盤に対して予算の分捕り合戦を行っているからです。

岸田政権は防衛費の大幅な増額を決定しましたが、これについても5年間で43兆円という金額が決まっているだけで、中身については明確になっていません。防衛費の増額については賛否両論がありますが、積極的に賛成していない人であっても、日本の防衛力が強化されるのであれば仕方がないと考えている人も少なくないと思います。しかし現実には、増額された予算が本当の意味での防衛力強化につながるとは限りません。

防衛費の増額が決定されて以降、永田町では増えた予算をめぐって予算獲得競争が行われており、とても防衛に関係するとは思えないものまで「防衛関連予算」として次々と要求が出てきている有様です。