病気や障害で配慮が必要、と具体的に伝えてみる


田中:糖尿病の方が、治療のために決まった時間に食事をとるよう医師に言われたとします。お昼が忙しくて、食事時間が遅い職場では、なかなか言い出しにくいかもしれません。しかし無理をして病気が悪化し、働けなくなったとしたらご自分も職場も本人も困ってしまいます。ですので、働く側にも、その場も遠慮よりも、きちんと治療をして安全に働けるよう、職場にきちんと相談することが求められています。

「求めなすぎ」も「求めすぎ」も職場のトラブルに。障害を持った人と働く上で必要な「合理的配慮」とは_img0
吹き抜けがあり開放感のある牧田総合病院

合理的配慮とは何なのか


ーー先ほど”合理的配慮”と”過重な配慮”は違うということを話されていました。ご自身も障害者雇用担当をする中で、他の社員に大きな負担が生じることが予想される場合、雇用を断念したこともあるそうですね。もちろん理想論で言えば、本人が問題なく働けるようにできるだけのことをするのが一番だと思うのですが、企業の体力にもよりますし、合理的配慮がどこまでできるのかというところはどこでも課題だと思います。合理的配慮というのはトレンドワードである一方、すごく曖昧な表現だなとも思います。

田中:会社側としては、病名や障害、症状をそのまま言って、漠然と配慮を求められると困ると思います。例えば認知面に障害がある方が、仕事を覚えるのに時間がかかるので、配慮として「業務指示はゆっくりひとつづつ」や「メモをとる時間をください」とおっしゃることは多いです。こういう時、私は見学や実習で必ず実際の業務に接してもらって、どのくらいゆっくり指示をすれば理解ができるのか、メモを取るのにどのくらい時間がかかるのか、メモは正確に書いて参照できるのかを確認するようにしています。本人の申し出通りに指導することが職場にとっても本人にとっても最適とは限らないからです。指導役の業務が滞るほど理解やメモに時間がかかる場合は、別の方法を提案します。たとえばメモをしなくてもいいようにマニュアルを用意しておく、体で覚えるまで一緒に行うなどです。障害を持つ人も周りの人も仕事がしやすくなる方法を見つけることが大切なので、具体的な場面ごとに現実的な方法を確認し、合意事項として了承をいただくようにしています。