「加齢」「年を取る」ことと、「老いる」「からだの機能が衰える」「からだが動かなくなる」ことは決してイコールではない、と言うのは身体哲学者で「からだの学校・湧氣塾」主宰の勇﨑賀雄さん。
そのポイントになるのは、足、特に親指なのです。足の親指をしっかり鍛えておけば、足腰の弱さも、背骨のゆがみも気にならず、呼吸力も向上し、年を取っても元気で健康なからだを獲得することは可能なのだそう。
著書『「80歳の壁」を越えたければ足の親指を鍛えなさい』より、足の親指が大切であることが伝わるエピソードと、今の足の親指の状態がわかる7つのチェックテストを抜粋してご紹介します。チェックテストはご自身だけでなく、同年代や高齢のご家族にも試してもらってくださいね。

写真:Shutterstock


足の親指の大切さ


人間は二足で直立に立ち、歩き回る(直立二足歩行) という他の動物にない奇妙な姿勢で生活しています。21世紀に入って人類学が盛んになり、この「人類がなぜ直立二足歩行をするか」ということが、あらためて大きな問題になっています。しかし、ここではその人類の直立二足歩行のWhy「なぜ」、How「どのようにして」立ったのかという問題はひとまず置いておいて、Whatʼs the point? 「直立二足歩行で何が問題なのか」という問いに対し、確実に言えそうなこと(答え)から入ります。

 

この人間の不思議な姿勢を支えているのは何でしょうか。答えは2つです。

ひとつは背骨という軸であり、もうひとつはからだ全体の体重からいえばとても小さな部位、足の親指の骨なのです。私は長年の経験から、人間のからだの姿勢を支える究極のポイント (部位) が、足の指の骨、端的にいえば親指(第一趾) の骨だということをつきとめました。この足の親指の骨を調整すれば、背骨の形も自然に整い、姿勢もよくなります。

解剖学的な裏付けの話を少しだけ付け加えます。図①をご覧ください。

 

足の親指は、となりの第二趾、第三趾と比べると明らかに太いのです。幅で見るとおよそ3倍、体積 (大きさ)でいえば3の2乗、つまり9倍の大きさです。
これはつまり、足(の裏)にかかる重さのほぼ8割を親指1本の骨(正確には親指に連なる5つの骨) だけで支えているということなのです。

からだの重さはカカトで支えていると思っている人が非常に多いので、ここでカカトの働きについて説明しておきます。下の図②を見てください。カカトはシカやイヌの足で確認してみると明らかなように、足のかなり高い位置に浮いた状態にある一種の「重り」つまり「はずみ車の重り」のようなものなのです。したがって体重がすべてそこにかかっているわけではありません。からだの重さは実際は、親指に連なる骨と関節(指節間関節) で支えているのです。カカトは地面に常についているわけではないのです。