「お坊さんぽく見える」ことが大事じゃない


——お坊さんでありながら、私服で表に立つというのも異色ですよね。

 

古溪 僕なりの大義があるんです。袈裟姿で頭を丸めていたら、お坊さんぽく見えるじゃないですか。言うことが全部ありがたいみたいな。僕はそれが嫌なので、私服で全然バンバン出ますし、いろんなことをやります。だって袈裟を着てようが着ていなかろうが、髪の毛があろうがなかろうが、魅力的な人は魅力的な人だし、お坊さんとして素敵な人は素敵だってなりますよね。今の世の中って外見的なもの、目に入るもので、評価しがちだと思うので、そのアンチテーゼとして、お坊さんだけど私服姿も見せています。

 

みなさん、明らかにすごい人生を生きている


——ちなみに、立ち上げた会社はどういう事業をするんですか?

古溪 生老病死に寄り添う事業にしようと思っています。『君と僕と諸行無常と。 TikTok僧侶の幸福論』では、自分の人生を幼少の頃から今に至るまでを振り返ったんですが、誰かのためになったらいいなとか、読んでくれた誰かがハッピーになってくれたらいいなっていう思いで書いたんです。だけど、完成したときに、自分が最初にもった感想は「救われたのは自分だったな」ということです。僕だったら、中学校受験全部失敗したとか、そういうことが誰しもあるわけです。そこを見ないようにするんじゃなくて、見るようにした方が生きやすくなるっていうのをこの本を通して感じました。

人間みんな誰しも暗い過去とか、黒く塗り潰している思い出が1個や2個あって、それは決して悪いことじゃない。そこの暗い過去とか、自分が嫌だったことに、光を少し当ててあげて、「でもそれもあるから今の自分があるんだな」と愛でられるようになると、生きやすくなると思うんです。だから、「あなたの人生、物語にします」というオンライン講座を開設しました。

 

古溪 生まれてから、今日に至るまでの人生をひとりで見るのはしんどいので、僕がいろんな角度から質問して、ここまで辿ってきた軌跡を確認するために、記憶のあるところから今日に至るまでの人生を、一緒に振り返りましょう、と。

放っておくと人生はせわしなく過ぎてしまうので、自分って何なんだろう、となってくるんです。誰かのために尽くしてきたけど、私って何なんだろうって。でも、お話を聞いていると、みなさん、明らかにすごい人生を生きているんです。本人はそれが普通だから、さらっと話すんですけど、聞いている側からしたらとても波乱万丈。すごいですね、それはよく乗り越えて今を生きていますね、と言いたくなります。

『君と僕と諸行無常と。 TikTok僧侶の幸福論』
著者:古溪光大 徳間書店 1980円(税込)

Tiktokで仏教の教えやお経の解説、また現代の若者たちの恋愛や人間関係、人生についての悩み相談に乗り、人気を博している曹洞宗雲門寺の僧侶・古溪(ふるたに)さん。本書では、受験戦争への絶望、就職した企業での気づき、出家し仏教に生きることを決めた理由など、自身の半生について飾り気のない言葉で綴りながら、SNSに寄せられた悩みにも回答。同性婚、推し活、毒親、怒りとの向き合い方など、仏教の教えを交えながらも、古溪さんならではの言葉で温かなエールを送ります。

■オンラインサロン/オンライン講座住職ならぬ「十職」を目指し、僧侶としてだけでなく実業家として「縁空(エンク)」を立ち上げ様々な事業も展開する古溪さん。月額制のオンラインサロンや、マンツーマンで人生の問題を聞き出しプラス思考に転換するオンライン講座「あなたの人生、物語にします」も展開中。お問い合わせ先は「ふるたに こうだい 公式LINE」へ。

撮影/神谷美寛
取材・文/ヒオカ
構成/金澤英恵

 

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