作家・ライターとして「現代の男女が抱える問題」について取材をしてきた佐野倫子。社会も価値観も変化していく令和の夫婦問題を浮き彫りにします。

今回お話を伺うのは、現在配偶者から離婚したいと言われて悩んでいる43歳の女性。その原因はまさかの「推し活」でした。

最初は「離婚の原因は他にもあるのでは?」と思いましたが、お話を伺ううちに、「大人の推し活沼」の深さに驚愕することになります。

 

取材者プロフィール
 妻:麻紀さん(43歳)。派遣社員。アイドルの推し活歴10年。
夫:誠也さん(47歳)。会社員。趣味はフットサル。
子:中学生がふたり。
 
 

アラフォーアイドル推し活のリアル


取材の申し込みや関連メッセージを送ると、返信はいつも深夜1時を過ぎていた麻紀さん。中学生のお母さんであり、毎日出勤をしているとのことで、体力のある方だなと感心していました。

取材現場に現れたのは、とてもオシャレで元気な方。聞けばマスコミ系の忙しい職場で働いているとのこと。エネルギーがあふれるチャーミングな様子が、失礼ながら筆者が咄嗟にイメージした「推し活にハマりすぎて離婚危機の女性」と少々異なっていました。

「アラフォーが推し活をするのは体力勝負なんです。子どももいて、どうしたって忙しいですから、睡眠時間を削るしかない。仕事から帰って、ものすごい勢いで家事や食事作り、子どもの支度などをして、一息つけるのが23時くらい。そこからが勝負です」

そう語る麻紀さんは、カフェのテーブルに、アイドルの素敵な写真が印刷されたアクリル製のスタンド、オタク界隈でいうところの「アクスタ」をせっせと並べてくださいます。

それはさながらアイドルのミニチュア。このアクスタと一緒に、「推し」にゆかりのある場所、いわゆる聖地を巡り、一緒に写真をとるのも楽しみなのだとか。

サービス精神旺盛な麻紀さんは、ほかにもキレイにデコレーションした「推し」のお顔が描かれているうちわや、ご自宅にこっそりと作られた「祭壇」の写真を見せてくださいます。

たしかにとっても凝り性であることが伝わってきました。ご本人の楽しそうなご様子から、こちらも聞いているだけで気持ちが高揚します。……しかしこれが離婚の火種になるということは、やはりご家族ともなると楽しいだけではないのかもしれません。

「推し活が、配偶者に受け入れられるかどうかは、周囲を見ているといくつかの『関門』があります。私の失敗談を含めて、推し活の実態と、家庭の様子をお話しできれば」