今、モード界を支配する「クワイエット・ラグジュアリー」というビッグ・トレンドをご存知でしょうか。“静かな贅沢”というこのブームは、今年3月にグウィネス・パルトロウが、スキー場での事故で訴えられた裁判で着ていたファッションが火付け役。
裁判の内容は、グウィネスがスキー場でぶつかってきたせいで骨折した上、グウィネスは倒れた彼を放置したまま逃げたと主張する被害者が、3900ドルの損害賠償を求めたもの。
その裁判の初日、被告であるグウィネスが身につけていたのは、オルセン姉妹のブランド「ザ・ロウ」の、1700ドル(約25万円)のクリーム色のニット。それに合わせていたのは3500ドル(約50万円)のカーキのコートにレイバンのサングラスとセリーヌのバッグ。どれもロゴなしのシンプルなデザインですが、ひとめで上質とわかるものばかり。
この日からグウィネスは、連日スタイリッシュな服装に身を包んで法廷に登場したのですが、どれもシックでありながら、彼女が富裕層であることを漂わせるような、シルエットの綺麗な素材のよいアイテムばかり。このときすでにモード界の2023年秋冬コレクションでは「クワイエット・ラグジュアリー」がキーワードになっていたのですが、その見事なお手本として、マスコミは彼女の法廷ファッションを特集。こうして「クワイエット・ラグジュアリー」は一躍、一般市民にも浸透する一大トレンドとなったのです。
実はこの突然のムーブメントにはもうひとつの要因が。アメリカのメディア王の大富豪一家を描いた人気ドラマ『メディア王〜華麗なる一族』のシーズン4最終回の放送と、グウィネスの裁判が重なったのです。
日本でも人気のこのドラマは、登場人物たちによる、最高級の素材が使われたロゴなしのハイブランドアイテムを多用した着こなしも見どころのひとつ。なんてことなく見えるキャップはロロ・ピアーナだったり、Tシャツはマルジェラ、スーツはブリオーニの100万超えのものだったり。
これらは「ステルス・ウェルス(見えない富)」と呼ばれる、富裕層たちの典型的なスタイル。彼らの間ではこれ見よがしなブランドロゴは「下品」とされ、この最終回ではパーティーに連れて来られた庶民の女性がバーバリーの大きなトートバッグを持っているセンスを主人公の富豪一家に揶揄される、というシーンが。そうした強烈なエピソードをわかりやすく体現したものが、グウィネスのコーデだったというワケ。
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