パラダイムシフトの今、「美の価値観」を刷新し続けてきた美容ジャーナリスト齋藤 薫さんが、注目したいある視点をピックアップします。
50代だからこそ目指せる美肌もあるはず!
最近、中年以降の“イケてるオヤジ”向けの情報に、気になるフレーズを見かけることが多くなりました。
「エロい肌を目指せ」という……。美容男子が目指すものが“清潔感あふれる肌”ならば、自分たちは清潔感を競っても意味がないからということなのか、単に美しい肌を目指しても虚しいということなのか、どちらにしても“エロい肌”を目指すというのは、新しい発想。女性にとって男性のエロい肌が本当に魅力的なのか、どれだけアピールするのかは別として、年齢を重ねた時に、“色気のある肌”を目指すと言うのは、アリなのではないかと気づいたのです。
思えば、いくつになってもひたすら「美しい肌、若い肌」。私たちがこれまで目指してきた肌は極めて画一的であり、年齢を重ねるほどに、当然のことながら美肌も若肌もやっぱり次第に難しくなっているのに、他の選択肢がないかのように、誰もがそこにこだわってきました。
でもだから、こんな選択肢もあるのかと、ハッとさせられたのです。50代だからこそ目指せる美しさって、それなのではないかと。
そもそも、人の魅惑や美貌を伝える言葉には「匂い立つような」という表現があって、肌の美しさにもよく使われてきました。言うまでもなく、まるで色香が目に見えるような、という意味。
『彼女の頬は薔薇色に染まり、うっとりと匂い立つような顔色をしていた』
これは山田風太郎という人の作品(『忍法封印いま破る』)の一文ですが、歴史小説の中にそうした表現が多いのも、文学的で古風な言葉であるうえに、女性の肌を賛美する場面では、昔の方が感性豊かだったことの表れ? 匂い立つ肌って、“美しさ若さ”よりもランクが上であるのを示唆しているようです。
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