──救えない命が山のようにある状況に、無力感を感じることはないですか? どう乗り越えているんですか?
無力感を感じることはしょっちゅうですが、似たような状況はずっと昔から続いていますし、今更その負の感情に向き合って立ち止まっても意味がありません。去年か一昨年のデータでも、飼い主の7割ぐらいがペットショップで買っているんですよね。保護犬、保護猫はまだまだ浸透していないし、とにかく発信し続けることですよね。
私が保護犬、保護猫の感動的な話ばかりを意識的に書いているのは、そこを入り口に興味を持ってほしいからなんです。だれだって辛い現実はみたくないけれど、より大きな興味を持ってもらい「知りたい」と思ってもらえれば、必ずペットショップの問題にぶつかります。そこから法律の改正や規制などに繋がっていくんじゃないかと。
──インスタグラムで、今回の著作の印税の使い道について書いていましたよね。何か新しいプロジェクトが動き出しそうな感じでしたが。
動物福祉に関することをやっていきたいなと思っています。今ってペットの健康寿命が伸びているんですが、そうなると年を取って捨てられるケースが増えていくんですよね。私自身経験してわかるのは、年老いた動物の介護って、やっぱり体力的にも精神的にもすごく削られるものなんです。もちろん「捨てていい」とは思いませんが、日本人的マインドで「自分の責任で看取るのが当然」と非難するのではなく、その辛さをもうすこし理解することで、動物福祉って広がるのかなと。
例えば私の先輩で「はまじぃの家」という動物福祉の活動をされてる方がいるんですけど、そこは普通のペットホテルをやりながら、その売り上げで介護レベルが高い子——寝たきりとか、歩行や日中の留守番ができない、水が飲めないという子たちを、無料で預かりますということをやっているんです。そういう存在や場所があればすごく心強いんですよね。
──お年寄りの動物が大好きなたまさんらしいです。
シニアを引き取る人って少ないので、その子たちが最後を過ごせるような場所と、一般の家庭で「預かりさん」を増やせないかなと考えています。インスタでも「高齢の子を引き取りたい」という方もたまにいらっしゃるので、そういう方に「預りさん」として看取りをしてもらえるようなシステムを考えています。「時間と場所だけ共有してください」というスタンスで、福祉の輪を少しずつ広げていけるような……。
こう言うと「そんな事やってくれる人いないよ」って言われちゃうんですが、頑張っていきたいと思っています。
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『たまさんちのホゴネコ』
tamtam (著)
公益財団法人の保護施設からブリーダー勤務を経て、現在は個人で犬猫の「一時預かりボランティア」を行っているtamtamさん。自身の経験を通した保護猫たちとの日々を優しい絵と文章で綴っています。SNSに投稿され多くの反響を呼んだ猫たちとのエピソードに、大幅な描きおろしを加えたかけがえのない6つの物語。小さな命から「今を生きる」意味を考えさせられる、愛と感動の実話は必見! 本書の売上の一部は、保護猫の支援活動などを行っている団体に寄付されます。
取材・文/渥美志保
編集/立原由華里
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