「プロボノ」とは、社会的・公共的な目的のために、職業上のスキルや経験を活かして取り組む社会貢献活動のこと。一家全員コロナ罹患手記「子持ちがコロナになった話」や副業マッチングサービス体験レポート「副業? 複業? 福業!」が反響を呼んだ3児の母・餡蜜桃子さん、今度は「プロボノについて調査せよ」というミッションに挑戦! プロボノを「無償でやる意義」を見出すべく、元職場の後輩デザイナーの亜美ちゃんを誘い、一般社団法人Nancyの名刺デザインプロジェクトに参画します。

 

お金が介在しないから同じ目標に向かいプロジェクトを進められるけど、介在しないからこそ難しい点も


亜美ちゃんからイラストのアイディアが3つ上がってきました。そのアイディアに至った経緯がLINE何スクロールするの? というくらいの熱量でメキシコから日本へ秒速で飛んできます(笑)。それをNancy代表の住田さんがジャッジしやすいように資料にまとめて提出するのが私の仕事です。

餡蜜さんが今回のプロジェクトのため作成した資料。

本業でも日頃から同じような仕事をしています。でも私はあくまでも広告会社の営業という立場で、お金を払っているクライアントの意向を最大限汲み、ことをスムーズに進めるための調整役を担っています。デザイナーが良かれと思ってやってくれたことで、自分もそれに賛同できたとしても、クライアントがNOと言えばそれに従うしかありません(勿論、こちら側の提案が受け入れられることも多々ありますが、クライアント側もビジネスのため様々な事情から判断せざるを得ないという背景があります)。
 
でも今回はプロボノ。お金は介在しません。タダでやってあげているなんて気持ちも勿論ありません。Nancyの活動、そしてご縁あって出会えた住田さんの志に共感し、そこに私と亜美ちゃんの実現したい未来への想いを込めてプロジェクトを進めていくのみです。
 
作り手の想いが色濃く出ているなぁと感じたものがこちら。子どもたちが掲げた手元だけがアップになっていて、それぞれ工具、釣り竿、鉛筆、フライパン、お花……様々なものを持っています。子ども達の持つ無限の可能性とそれを見つけるための手助けをするナンシーの活動を表現したイラストです。

 

ちなみに工具全般をスペイン語(※メキシコの公用語はスペイン語です)で「herramienta」と言うのだそうです。医者やセラピストが相談者と向き合う際に「私が問題を解決するのではなく、問題解決の糸口を授けるのでやるのはあなた自身ですよ」という意味で「私はherramientaをあげるだけ」という表現をすると言います。亜美ちゃんのメキシコで得た知見と遊び心が盛り込まれた作品になっています。
 
こちらの案に加えて全部で3案をご提案しました。初回の提案後のフィードバックはとても緊張します。本業のほうでしたらイラストレーターを起用する際には過去の作品を何枚も提示して、タッチをインプットした上で具体的にどういう作画をしてほしいかリクエストします。そしてラフスケッチの段階で調整に調整を重ねてから仕上げていきますので、大きくイメージと異なるものが出てくるということはありません(というか、ないようにするのが折衝役である広告会社の仕事です)。
 
想いは同じ方向を向いていたとしても、イラストってとても好みがわかれるものなので、イメージと違うけど無料でやってもらっているから仕方ないか……みたいなことが起きてしまったら、それはとても悲しいなと心配しました。こういった点はプロボノを利用する側も予め覚悟を持って挑まなくてはいけない部分だと感じました。