相談者の加代子さんが疑問に思っていたように、人の死に関する片付けの名称には、①生前整理、②老前整理、③遺品整理の3つがあります。
①生前整理 生きている間に資産や身の回りのモノを整理し、見直すこと。残された家族が相続や処分をスムーズに行えるように整理します。
②老前整理 老後を迎える前に、人間関係や所有物を整理すること。老後の生活を快適に過ごすために、整理や見直しを行います。
③遺品整理 亡くなった後に家族や遺品整理業者などが所有物を整理すること。遺品が多いと残された方の負担になるので、現在は生前整理と老前整理が注目されています。
生前整理は残された家族のために行いますが、老前整理は自分のために行うという点が大きな違いです。また、老前整理はモノの整理が最終目標ではなく、片付けた後に「どう生きるか」を見据えた未来志向の片付けです。
近年は、著名人がメディアで実家や自分自身の片付けについて言及することも増えてきました。ピーターこと池畑慎之介さんは、ご自身が行った老前整理について、「自分の終わりのためではなく、これからの人生の始まりのために行えた」と話しています。
老前整理は、「自分が豊かになるために、先のことを考えて無駄を省くこと」と言い換えられるのかもしれません。必要のないモノを削ぎ落とすことで、頭や心も整理され、スッキリとした気持ちで第2の人生を迎えることができる。ですがそれには、気力と体力があるうちにやる必要があります。
老前整理なんてまだ早いと思う方もいらっしゃるかもしれません。そういった方は、実家の片付けや普通の断捨離に当てはめて考えてみてください。老前整理には、以下のようなメリットがあります。
老前整理は体が老いる前の元気なうちに行うもので、今回の相談者・加代子さんのご友人のように、快適な老後を過ごすために40~50代から始める人も多いと聞きます。加代子さんも50代なので、決して他人事ではありません。始める時期としては、一般的には以下のようなタイミングが挙げられますが、早く始めれば始めるほど充実した暮らしが待っています。
断捨離に関しては、いろいろな方が独自の方法を紹介していますが、個人的にはくらしかるのホームページの事例がとても参考になると思います(くらしかるの代表は、老前整理を提唱した方で、その名も『老前整理』という著書を出されています)。
必要なモノと不要なモノを分別し、重要なモノ・大切なモノから保管すること。また、最初から完璧を目指さず、決して一度に片付けようとはせず、焦らずに進めることがポイントです。タンスや食器棚、テーブルなどの大きなモノから片付けて、衣類や小物などの不要品を処分していくのがやりやすい方法です。
老前整理は、有形財産だけでなく、無形財産の整理や入院・介護・エンディングにまでに関わるとても広い範囲を対象としています。すべてを行う必要はなく、できるところ、必要なところだけでも良いのかもしれません。
自分でやる時間が取れなかったり、気力がないという方は、老前整理とは少し趣旨が異なりますが、生前整理の業者にお願いするというのも1つの手です。
私事ですが、現在勤めている会社の定年退職を目前にして、自分自身も老前整理を考え始めました。人生の転機を迎え、今はこの際不用なものを見つめ直したいと思っています。普段使いしなかったジュエリーやブランドバッグは子どもに譲り、サイズの合わない洋服は、たとえ高価なものであったとしても自治体の古着回収へ。
また、今の仕事でしか必要のなかった専門書籍や人間関係などは、この先なくても問題ありません。仕事関係のLINEグループもこれからは必要なくなります。集団で連絡する必要はなくなるので、個人的につながりたい人だけ登録しておけばいいのです。
今後は新たなキャリアをスタートさせますが、不用になった仕事道具などを処分することで、余裕が生まれるでしょう。
今回は、働き盛りの人にもぜひやっていただきたい老前整理について紹介しました。年の瀬のこのタイミングで、お金や人間関係、身の回りのモノを整理して、不要なモノを手放す生活について少しずつ考えていきませんか?
構成/渋澤和世
取材・文/井手朋子
イラスト/Sumi
編集/佐野倫子
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