「母親が子どもをなんとかしろ」という空気

「周囲に責められるのでは」と不安を感じる母親が6割。「共働き」から「共育て」社会になるために払拭すべき“空気”とは_img0
 

川良:そういえばニュースで、バスの中で子どもが大泣きしたときに、バスの運転手さんが車内アナウンスで、「お母さん、大丈夫ですよ。赤ちゃんですから気になさらないでください」と言っていたと話題になっていましたね。

羽生:そのバス乗りたくなる! そういえば最近、インバウンドで街に海外の方が増えているじゃないですか。この間、山手線の車内で、男の子と小さな赤ちゃんがいる日本人の家族連れが座っていたんですが、男の子が靴を履いたまま座席に上がっちゃって、隣に座っていた女性のスカートに男の子の靴がバンバン当たっていたんですね。周囲はそれをすごい目で見ていて、なんなら「母親は土下座しろ」という空気すら漂っていた。

でも、同じ車両には外国人の男の子もいて、その子も靴を履いたまま座席の上に立って騒いでいたのに、周囲はその子や家族のことは気にしていなかったんです。

川良:日本には「内と外」の感覚があって、村社会というか、“内の人”には厳しいかもしれないですね。村人は掟を守らなきゃいけない、村人でなければ仕方ない。そういう感覚がどこかにあるというか。

羽生:それに、非難を浴びるのって母親ばかりですよね。お母さんは「すみません」って必死に謝っているとき、お父さんは隣で何食わぬ顔で景色を眺めていたりしますし。そんな光景に遭遇すると、スリッパでお父さんの頭をパコーンってやりたくなります。まだまだ、「母親が子どもをなんとかしろ」という空気があるんですよね。

【参考】「子育て中においては、母親はある程度、精神状態が悪化しても仕方がない」という意見に対してどう思いますか(n=999)

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出所:「包摂性社会の再構築と少子化対策としての健康問題の重要性」2023年調査レポート(内閣府・戦略的イノベーション創造プログラム)


理不尽を避ける「ライフハック」が不要な社会を

——以前、育児をしている男性にお話を聞いたのですが、父親だけでベビーカーを押していても舌打ちされたことはないし、理不尽な目に遭ったこともないとおっしゃっていて。「それは自分が男性だからかもしれない」と話されていました。

川良:「パパなのに泣いている子をあやして、大変ですね」みたいな感じなのかもしれないですね。

 


——母親を攻撃する人は、男性や強そうな人を標的にしないですよね。お母さんが、「金髪にしたり、派手な格好をしたら、子連れでも理不尽なことを言われなくなった」という投稿がSNSでバズっているのを見たことも。それがライフハックのように絶賛されるのもどうかと思う部分もあります。本当はそのままで尊重されないといけないですよね。

川良:本当にそう。ライフハックという「いい話」で終わらせてはいけないですよね。ベビーカーじゃなく抱っこ紐を使うというのも、怖い目に遭いたくない、子どもを守る手段としてだったり。もちろん、その気持ちも痛いほどわかるんです。ただそうして、ライフハックを編み出したり、“わきまえるママ”みたいなのが褒められすぎてしまうと、社会が変わらないと思うんです。


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撮影/小野さやか
取材・文/ヒオカ
構成/金澤英恵
 

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