子育てに不寛容な社会に追い詰められる母親。その実態が明らかになったレポートを元に、「日経DUAL」元総編集長の羽生祥子さんとミモレの川良咲子編集長が語り合った前回記事。今回は、ミモレで実施した40~50代女性の生活意識・実態を知る「ミドルエイジ女性白書」を眺めながら、子育てに対する社会の不寛容さ、さらに不寛容な社会をどうやったら変えられるのかを探ります。

第1回 「周囲に責められるのでは」と不安を感じる母親が6割。「共働き」から「共育て」社会になるために払拭すべき“空気”とは>>

 

羽生祥子さん(写真右)
HABUPRO代表取締役社長。1976年生まれ。2005年に日経BP入社。2013年に働くママ&パパに役立つノウハウ情報サイト「日経DUAL」(当時)を創刊し、同社最年少で編集長に。2018年に「日経xwoman」を創刊し総編集長に就任。2020年には「日経ウーマンエンパワーメントプロジェクト」始動し、内閣府少子化対策大綱検討会、厚生労働省イクメンプロジェクトなどのメンバーとして働く女性の声を発信する。今回紹介する調査レポート「包摂性社会の再構築と少子化対策としての健康問題の重要性」では、メディアアンバサダーとして参画。

川良咲子(写真左)
1976年生まれ。1999年講談社に入社。「FRaU」で14年間ファッションと読み物記事を担当し「with」を経て、2015年に「mi-mollet」へ。2019年7月にミモレ編集長に就任。二児の母。2022年1月より国家資格キャリアコンサルタント。

 


「不寛容さ」を経験してきたミドル女性は「寛容な人になりたい」

 

——前回、「社会の子育てへの不寛容さ」について語っていただきましたが、ミモレが行った「ミドルエイジ女性白書」では、「他者に寛容でありたい」「寛容になりたい」という声も多かったそうですね。


【参考】「ミドルエイジ女性白書」サマリー抜粋
◉ ミドルエイジ女性は、これから必要な力として、予測できない事態に対応できる「柔軟性」と「楽観性」を挙げています。

◉ また「自分軸」を持った「柔軟で他人に寛容な」女性に憧れ、「機嫌がよく他人を元気にできる存在」になりたいという気持ちが伺えます。

◉ 一方で「〜すべき」「普通は〜じゃない」と否定・押し付けられるのを嫌い、「自分らしい生き方や美しさ」を求め、ファッションや美容も「健康で元気に見えること」を重視。

出所:「ミドルエイジ女性白書」“2:人生の成熟ステージへ”(mi-mollet)より
 


羽生祥子さん(以下、羽生):これ、すごく意外でフレッシュな声ですよね。

川良咲子(以下、川良):「寛容になりたい」と思えるのはなんでだろう? ってずっと考えていたんですけど、ミドル女性は「寛容でいること=自分の豊かさになる」と分かっているからじゃないかと。年齢を重ねるにつれて、人ってどうしても狭量になってくるじゃないですか。一種の老化現象かもしれない。でもやっぱり、「不寛容な扱いを受けることで嫌な思い」を経験してきた方たちからこそ、不寛容には抗いたい、寛容になりたいと思えるんじゃないでしょうか。

職場でもあると思うんです。例えば、「少し年上の“同性の先輩”が一番厳しい」とかありますよね。「昔はこんなことで休まなかった」「私のときはこうだった」と責められたりして。子育てを卒業した人の一部が、喉元を過ぎたら子育て世代に厳しくなるのに似ているかもしれません。同じような経験でも、時代や環境や人それぞれの事情で、全く同じではないはずなのに、年上女性に“私の経験”を振りかざされて傷ついてきた女性も多いのではないかと。

羽生:この調査の回答者は40〜50代ですよね。喉元を過ぎてないっていうか、自分がされて嫌だったことをちゃんと思い出していらっしゃるのって、すごいことだと思います。