2019年5月、自民党の派閥の一つである清和政策研究会(現在の通称・安倍派)による政治資金パーティーの様子。壇上にいるのは当時内閣総理大臣の職にあった故・安倍晋三氏。写真:アフロ

自民党最大派閥、安倍派の政治資金パーティーをめぐる裏金問題が政界を揺るがす事態となっています。派閥の幹部を含む多くの議員がパーティー収入のキックバックを受けていた可能性が高まっており、これが事実だとすると安倍派の崩壊につながる可能性も出てきます。

 

派閥で多額の政治資金を集めながら、それを個別の議員にキックバックし、収支報告書にも記載していないというのは、まさに裏金そのものであり、言語道断であることは言うまでもありません。この問題については多くの識者が指摘していますので、このコラムでは直接的な言及は避け、もう少し視野を広げて議論してみたいと思います。

政治とカネをめぐる問題は古くて新しいテーマであり、30年以上も前から何度も取り上げられ、政治資金規正法の改正も行われてきました。

当然のことながら、政治家がたくさんお金を集め、その資金をベースに政治活動を行うことが不健全であることは明らかです。しかしながら、政治資金に関する規制というのはそう単純な問題で済まされる話ではありません。

一見すると、たくさんのお金を集めたい政治家と、政治家の資金集めを批判する国民という図式で政治資金の規制が行われてきたと解釈されがちですが、実はそうではない一面もあります。

かつての政治家というのは、裏金も含め、お金を集め放題という状況であり、それによって政治の方向性が歪められるというケースがよくありました。昭和の時代には総裁選直前ともなれば、札束が乱れ飛ぶのが慣例で、段ボール箱に無造作に現金を入れて、裏金を運ぶ議員もいたのです。

国民からの反発が大きくなったことから、政治資金規正法が改正され、政治家は以前のように資金を集めることが難しくなりました。では政治家全員がやむを得ず、こうした選択したのかと言うと、必ずしもそうではないところがこの問題のミソです。

実は永田町でもっとも力を持ち、何代にもわたって政治家を輩出してきた世襲政治家を中心に、政治資金規正法を都合よく利用してきたという面があります。どういうことかと言うと、選挙の地盤が確立している世襲議員にとって、法律で資金集めが厳しく制限されている方が、自分たちの特権を長く維持できます。つまり、政界の新規参入を防ぐため、政治資金規正を新人の立候補阻止に使ってきたのです。

 
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