日本ではNetflixで公開された映画『ナイアド~その決意は海を超える~』は、ドキュメンタリーで名を馳せたエリザベス・チャイ・バサルヘリ監督の初の劇映画。2013年にキューバからフロリダまで180kmを泳いだ女性水泳選手ダイアナ・ナイアドと、その親友でコーチのボニー・ストールの挑戦の波乱万丈を描いた作品ですが、これはもう今年の決定版みたいな作品です。
自信と傲慢と不屈の精神を持ち合わせた「やや面倒くさいオバハン」であるナイアドと、そんな彼女に呆れたり怒ったりしながらも「あんたが死ぬ時は私が絶対に看取る」と決めているストールは、ズケズケいいながら根に持つことはまったくなしの面白コンビで、よく言う「年を取ったら一緒に住む約束をしてる女友達」の理想形。映画には、性的マイノリティ、スポーツ界のグルーミング、「年を取ること」など、今の時代に通じる様々な要素がありながらも、そういうものを乗り越えた先にある完全な自由、そして「自分を生きる幸せ」と「誰かと生きる幸せ」が両立した世界を描いてめちゃめちゃ感動的です。
主演のアネット・ベニングとジョディ・フォスターはある世代にとっては「オスカーを獲得した美人女優」の代名詞ですが、「んな肩書きどーでもいいわ!」とばかりに、ワイルドな60歳を自由に嬉々として演じている姿が最高です。上の世代のこういう姿は、迷える40~50代の女性にとってはものすごい勇気になること間違いありません。
どの映画も、女性たちが「(恋愛以外の)自分の人生を探求する物語」で、それを女性たちの連帯が支えています。「女性は恋愛してこそ」「女の敵は女」という男社会の刷り込みからの脱却は「#metoo」以降、いろいろ描かれてきたと思いますが、今年はさらに「脱却のその先」を思わせる作品が揃ったなと言う感じ。
「女性ならではの視線」というのも、ここ最近やり玉にあげられる言葉ですが、私自身は、『女性ジェンダーのステレオタイプとしての「繊細さ」「美しさ」「優しさ」=「女性ならではの視線」』には、「んなもんねえわ!」と反論したいけれど、「男社会から見た『女性的な生き方』を強いられてきた人たち」だからこそ持てる視点は、絶対にあると思っています。来年もそういう女性監督にガンガン暴れまくってもらいたいなあ。
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