そこから、キラちゃんのためにいろんな工夫をする日々が始まりました。水を飲めないかわりに、重湯のように水分が多めのご飯を作るようにしました。今、キラちゃんに用意しているのは、不溶性の食物繊維を多く含んだ、消化器サポートのカリカリを柔らかくしたものに、缶詰やレトルト、“サラダ”と称して細かく刻んだ猫草を入れて混ぜたもの。キャットフードは少々高くても、キラちゃんのためにいいものを用意しています。朝6時、昼12時、夕方6時、深夜0時の4回にわけて、食べさせてやります。
自力では食べられないので、食事用の台を作りました。キラちゃんには枕の上でうつ伏せになってもらい、夫が両方の前足を支えてやります。こうすると、キラちゃんは器に顔を入れて、ペロペロと食べるようになったのです。時々食べなくなることもありますが、ちゅ〜るは別格。ちゅ〜るだけは絶対に食べてくれます。
普段はたくさんのペット用シーツを敷き詰めた“お布団”の上に横になっています。おしっこやうんちもこの状態でします。うんちをすると出血してしまうのですが、しっかり食べて、たくさんうんちをしてくれるのは元気の証拠。お尻を拭いてやって、ペット用シーツを交換します。
キラちゃんは立ち上がることはできないのですが、足を動かしていることが多く、顔も上にあげようとします。キラちゃん自身に、また起き上がりたいという意思が感じられ、今にも立ち上がるんじゃないかと思うほどです。目も見えなくなってしまったのですが、澄んだ瞳で、目ヂカラがあります。
ずっと同じ向きで寝ていると床ずれしてしまうので、持ち上げて向きを変えるのは夫の仕事です。実はキラちゃんが元気な時、夫のことが嫌いだったようで、絶対に触らせなかったし、猫パンチを喰らわせるほどでした。でも、キラちゃんが介護状態になってからは、夫が触れても静かに身を任せています。夫は病気になってからはじめてキラちゃんと触れ合えるようになったのですが、キラちゃんからすれば、夫のことは「召使い」くらいにしか思っていないのかもしれません(笑)。
今は、うんちが出なくなった時に病院に行くくらいで、家での介護生活が続いています。でも、もうダメかと思ったことは何回もありました。つい数日前も深夜に呼吸が荒くなりました。夜、私は常にキラちゃんの横で寝ているので、体を撫で続け、水をやっていたら状態が落ち着いてきたので、ホッとしました。医療的には何もできなくても、キラちゃんは自力で頑張っているので立派です。
子どもがいない私たち夫婦にとって、キラちゃんは娘同然。元気だった頃は、常にブスっとした表情をしていたので、“ブス子ちゃん”などと呼んだりもしていましたが、寝たきりになった今は一転して穏やかな顔になり、子猫のような愛らしさがあります。私たち夫婦は、キラちゃんと一緒に歳を重ねてきたので、言葉は交わせなくても、お互い通じ合える部分があると感じています。
また、キラちゃんはちゃんと私たちの会話に聞き耳を立てていて、理解していると思うのです。だから、キラちゃんが横にいる時は、「旅行に行きたいね」とか、「しんどいね」といったことは言わないようにしています。
キラちゃんは時々、大きな声で鳴くことがあります。また、ご飯を食べている時に、目に涙をいっぱいためてポロポロと涙を流すこともあります。そこには何か意味があると思うのですが、言葉が通じないので、汲み取れなくてもどかしい思いをすることはしょっちゅうです。それでも、キラちゃんが生きようとし続ける限り、私たちにできることは何でもしてあげたいし、それが私たち夫婦にとって生きがいにもなっているのです。
イラスト/Shutterstock
文・編集/吉川明子
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