猫と一緒に暮らす人にとっては、家族のように大事にしている猫と1日でも長く暮らせるのは幸せなことです。その一方で、猫も飼い主も年齢を重ねていくことになります。
それでも、猫とともに暮らしてきた時間はかけがえのないものですし、シニアになった猫だからこそ、愛着もひとしおです。そこでミモレでは、シニア猫(ここでは10歳以上と定義)と暮らす人たちのお話に耳を傾けてみようと思っています。
今回登場するTommyさんは、夫と娘の3人暮らし。Tommyさんの母が、ガリガリにやせている猫や、怪我をしている猫をみかけると放っておけなくて頻繁に家で保護していたのを間近に見ていたこともあり、Tommyさんも気づけば母と同じような道を歩むことに。
今、Tommyさんの家にいる奥さん、アラン、茂吉はみんなTommyさんが手を差し伸べた猫たちです。中でも2023年10月末から家猫になった奥さんは、12年間、家の庭に来るたびにごはんをあげ、寝床を用意して面倒を見てきた間柄。推定16歳で、弱っている姿を見て「このままでは心配」と捕獲を決意しました。
夫婦のように一緒にいたブチャと奥さんのために、家の敷地内に作った寝床(写真左)。左から茂吉、クロマル、アラン。仲良く外を見つめる(同右、写真:Tommyさん、以下同)
Tommyさん(60代)会社員の夫、娘と暮らす主婦。東京都内の下町で生まれ育ち、気づけばアラ還。母の影響を受け、弱っている猫がいると、つい助けたくなってしまう。いま一緒に暮らしている奥さん、アラン、茂吉も外猫からTommyさんの家猫になった。
奥さん(推定16歳) 白黒のメス猫。10年以上前から、ブチャという名前のオス猫と夫婦のような関係で、Tommyさん宅の軒先に時折姿を表していた。最近、元気がなくなり、「年齢も年齢だし、外で暮らすのは大変そう」と思ったTommyさんに保護される。猫エイズ陽性と甲状腺異常が発覚したものの、現在は治療しながら家猫修行中。
アラン(12歳)12年前のある日、ブチャが連れてきたキジトラ柄のオス猫。よちよち歩きをしていた、手のひらサイズの子猫だった。Tommyさんが自分の胸元に温め、すりつぶしたキャットフードなどを与えられて育つ。子猫から一緒にいるのに気難しいところがあり、Tommyさんの娘以外にはあまり懐いていない。
茂吉(11歳)アランがTommyさん宅の猫になった翌年、路地裏でうずくまっていたところ、Tommyさんの娘に保護される。茶トラのオス猫で、発見時は脱水症状と脱臼があった。アランが嫉妬するので里親を探していたものの、いつしかアランと仲良くなったので、そのままTommyさん宅の家猫に。無邪気でフレンドリーな性格。
ブチャ(推定14〜15歳没?)奥さんと夫婦のように一緒に行動していた茶キジ柄のオス猫。気性が荒いものの、奥さんには優しかった。Tommyさんが何度か保護を試みたものの、成功せず。やせ細ってきたので保護したかったものの、2018年9月に突然姿を見せなくなり、消息不明に。
クロマル(12歳没)13年前に大怪我をしているところを見つけ、Tommyさんが保護した黒キジ柄のオス猫。傷が塞がらなかったら安楽死もありうると言われていたが、手術を経て看病したかいがあって回復。臆病な性格。2021年10月にガンでこの世を去る。
私が生まれ育った東京の下町では、野良猫がいるのは日常の風景でした。母は病気や怪我をしている猫、か弱い子猫を見かけては保護していたので、常に家に猫や犬がいました。父も「しょうがないな」という感じで見守っていました。やがて私が結婚し、親とは二世帯住宅で暮らすようになったのですが、母が亡くなった時も、保護していた猫が1匹いました。その子は私が受け継いで、最期まで一緒に暮らしました。
そんな環境にいたこともあり、自宅のテラスに猫が来たら餌を用意して、寒い季節には寝床を作っていました。近所に住む母の友人も、地域猫の世話をしている人が多く、ブチャと奥さんは、15年前くらいからうちにも顔を出していた地域猫だったのです。
2011年2月のある日、春になるたびに子猫を産んでしまう地域猫対策として、猫仲間のみなさんと話し合って、区の助成金を活用してTNR(TRAP〈つかまえる〉→NEUTER〈不妊手術する〉→RETURN〈元の場所に戻す〉の頭文字を取った略称)をしようということになりました。ブチャと奥さんもなんとか捕まえて手術をしたのですが、うちには当時、クロマルという怪我をした猫を保護していたため、さらに2匹を受け入れる余裕はなく、地域に戻す決断をしました。この時、ブチャは7〜8歳、奥さんは2〜3歳だったと思われます。
TNRをしてから約半年後、ブチャがよちよち歩きの子猫をうちに連れてきました。ブチャが「この子にもご飯をあげてくれよ」と言っているような感じで、その子猫はひょいとつまみ上げられるくらいの大きさでした。外の厳しい環境にはおいておけないと思い、うちで面倒を見ることにしました。この子が今も我が家にいるアランです。怪我をしていたクロマルが回復していたこともあり、ブチャや奥さんも保護したかったのですが、野良生活が長いせいか、彼らを捕まえることができませんでした。
茂吉がうちに来たのは、アランがうちの子になった翌年のこと。娘が裏路地でうずくまっている子猫を見つけて保護しました。弱った猫を見つけると放っておけない性分は、母から娘まで、3世代にわたって受け継がれてしまったのかもしれません。
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