時代の潮目を迎えた今、自分ごととして考えたい社会問題について小島慶子さんが取り上げます。
局地的な現象かもしれませんが、私の周りではNHKの大河ドラマ『光る君へ』が話題です。
「まひろと三郎の関係にキュンキュンする」
「とにかく装束が美しい」
「頭脳で身を立てる紫式部がんばれ」
などなど。
権力渦巻く宮廷の人間関係のややこしさ(恐ろしさ)を職場に重ねて、「うわー呪いをかけるとか毒を盛るとか、平安貴族のやること怖すぎるけど、心理的にはあるあるだな」などと思いながら観ている人もいるでしょう。
私は、歴史物にありがちな男性の主人公がしょっちゅう怒鳴る、力む、毎週合戦……などの筋書きではなく、文化と知性と心理戦に注目して描いているところが新鮮で、楽しく観ています。専門家の目には現代的すぎるかもしれないけれど、マンガ『あさきゆめみし』で源氏物語に親しんだ私のような世代にとっては、違和感なく観られるのだと思います。
紫式部の生い立ちについては史料では不明なことも多いだけに、現代の視聴者が引き込まれるような背景が描かれています。ジェンダーやハラスメントなどの今日的な課題にも通底する切り口と見ることもできるので、観たあとにあれこれと話したいことが湧いてくるのでしょう。
さて、そんな紫式部も暮らしていた都を、先日訪ねて参りました。昨年から約束していた人に会いに行ったのです。
今日は格別に冷え込みますねと地元の人が身を縮める寒さのなか、向かった先は虎屋菓寮。古い蔵が建つ素敵なお庭を眺めながら、お茶とお菓子を頂けます。約束したお相手は、少し奥まったところの椅子で待っていらっしゃいました。昨年、共通の友人に紹介されて知り合った方。鎧司(よろいし)の明珍阿古さんです。大鎧を作っていらっしゃいます。
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