夫は子どもができたら「セックスミッション完了」と言う雰囲気でした


伽奈さんが夫の浩司さんと出会ったのは大学時代。サークルの先輩だった浩司さんは、伽奈さんとの結婚を念頭に大学院卒業後に大手メーカーに就職し、伽奈さんが卒業すると同時に結婚しました。

「彼は私が初めて付き合った女の子で、大切にしてくれたし、すんなりと結婚生活が始まりました。また一方で私は、幸運なことに希望していたインテリアの輸入会社に採用されました。

仕事は面白かったですね。周囲は私よりもずっと学歴や経験がある人たちで、『なんでお前が内定したんだ?』とよく言われました。就職氷河期で、百倍以上の倍率だったと思うので、自分でも不思議でした。入社してからは、仕事が非常に厳しくて結構泣いていましたけど、昭和生まれの根性で、ろくに寝ないで頑張っていました。『お前、ドジでのろまな亀って感じだけど、妙に面白いし根性はあるな』なんてよく言われているくらいできないやつだったんですけど……。

この頃に仕事でお世話になった方々が、今でも助けてくれることもあり、ありがたいですよね」

その後、男の子に恵まれた浩司さんと伽奈さん。出産から半年で仕事に復帰して引き続き奮闘しますが、両親が遠方なこともあり、仕事と家庭の両立は難しかったといいます。

「この頃から、浩司さんは家庭の仕事や子育ての戦力としては期待できないということが分かってきました。人の細かい話は聞いてないし、興味のないことはちっともやらないタイプ。

一方で私、イライラや不満をひとにぶつけるのが本当に大嫌いで。そんなことをするくらいなら関係をリセットして、失踪したほうがマシってくらい。喧嘩も好きじゃないですね。傷つけたくない、悪者になりたくないという気持ちが小さい頃から強いです。

どんなに夫に不満があっても、若かったのでいわゆる『夫婦生活』が円満であればそれで私のストレスが解消されてきました。まあいいか、という気分になるんです。ところが、彼はもともと性欲が薄くて、息子ができてからは完全にセックスレスになってしまいました。外で浮気をしているような気配はなく、まるで子どもを作るという役目を果たして、セックスというミッションを終えたと思っているようでした」

 

おっとりした口調で、核心に言及する伽奈さん。

お話を伺っていると、過去のエピソードに気になるところがいくつかありました。伽奈さんは衝突を避けるため、言いたいことは胸に収めてなかったことにしがちのようです。また、浩司さんも仕事第一主義で、家はとにかく波風が立たなければOKと考えているふしがあります。

 

そしてお2人とも、それが結局は一番心地いいと感じている。

何か問題があるときに、力を合わせて解決するのが夫婦だと、漠然と思い込んでいました。しかしそうではない夫婦もいて、日常をうまく運んできたことは事実なのです。家事育児の負担は伽奈さんにのしかかりながらも、それを口にしてぎすぎすしたくない気持ちが強く、なんとか辻褄を合わせていく生活だったよう。

ただし、ひとつどうしても解決しない問題が残りました。伽奈さんの性欲は宙ぶらりんに放っておかれてしまいます。そして皮肉なことに、彼女は年齢を重ねるにつれてものすごく年下にモテるタイプでした。