【2】実はツンデレでもない


普段はクールで口が悪いけど、ふたりになると優しくて甘えん坊になる。そんなギャップが、俺様男子の魅力のひとつでもありました。

しかし、甘い幻想に冷や水ぶっかけるみたいで恐縮ですが、冷たい態度で相手を振り回しておきながら、ここぞというときだけ優しい言葉で懐柔するなんて、どう考えてもDVの手口。「××銀行からの大切なお知らせ」という件名で、怪しいURLに誘導してくるメールくらい騙されちゃいけないやつです。

優しさは、他人の心を掌握するための切り札ではありません。ここぞというときに優しくできるなら、ちゃんと普段から優しくしてくれという話。更生した元不良よりも、最初からずっと真面目な人のほうがエラいのと同じ理屈です。

デレない・相手を見下さない・いきなり体に触らない。『となりのナースエイド』大河先生が令和の「シン・俺様男子」なワケ_img0
日本テレビ『となりのナースエイド』第5話(2月7日(水)夜10時〜放送)より。

その点、大河先生は徹頭徹尾ツンツンしている。今のところデレる要素がゼロです。PTSDに苦しむ澪を気にはかけているけれど、だからと言って過剰に優しくするわけでもなく、態度はいつも通り。アナフィラキシーショックを発症した男性を二人で助けたときも、「病気ってのは少しずつ治していくもんだ」とあくまでクールでした。

大河先生が信じているのは、ファクトとデータ。そこがブレないから、どんなにそっけない対応をされても「そういう人」として受け入れられるのです。

 


【3】同意のない接触をしない


俺様男子の必殺技といえば、壁ドン&頭ポン。これらの行為が時代錯誤なことはもはや説明するまでもありません。

ちょっと脱線しますが、先日放送終了した『SHUT UP』(テレビ東京系)というドラマで、主人公の女性の髪についた葉っぱを男友達が「さわっても平気?」と確認してからとるというシーンがありました。これまでの恋愛ドラマなら、そこで何も言わずに男性に髪をさわられることにヒロインがドキッとするのが定番の描写。

でも、性別にかかわらず、いきなり髪をさわられてうれしい人ばかりではありません。『SHUT UP』では同意を得てから髪にふれたことに対し、男友達は「普通でしょ。人の体だもん」と当たり前のように答えていました。今、男性に求められるのは、女性の心と体をきちんと尊重すること。このやりとりを観て、日本のドラマもここまで来たか……と静かな感動すら覚えました。

俺様男子とて同じです。同意のない接触が胸キュンの材料になると思っているのなら、今すぐ義務教育からやり直してほしい。九九と一緒に性的同意について学んできてほしい。その点、今後どうなるかはわかりませんが、現時点で大河先生が壁ドンや頭ポンをしてくる気配はゼロ。そんなところに、何とも言えない安心感を覚えるのです。