2階には、電化製品や、昆虫が入った虫かごがたくさん並んでいる部屋がありました。

電化製品を好きな子が自由に組み立てたり、虫好きな子が虫を収集したり、育てたりしているとのこと。「娘がテレビのリモコンをいたずらするので困るんです」とお伝えすると「自分で操作できるようになるのは、暮らしが豊かになりいいことですよ」と、にこやかにおっしゃいます。

学校の壁には直に、たくさんの漢字や絵がかいてありました。

卒業生で、『会社四季報』に書かれいている文字を書き写すのが好きなお子さんがいたそうです。思う存分に書いていくことで、自然に漢字も、会話に役立つフレーズも覚えていった、と伺いました。

【障がい児を育てながら働く⑧】「この小学校なら、娘も大丈夫」と確信。私立特別支援学校「愛育学園」との出会い_img0

愛育学園の入学面談に訪れた日。当時の教頭先生に見守られ、トランポリンを楽しんでいました。

学びの場は、校内だけではありません。向かいの有栖川宮記念公園では、さまざまな国籍や年齢の人たちと自然と交流することになります。娘も入学後、公園の池にたたずむ人たちと仲良くなりました。

子どもが行きたがれば、毎日でも近隣のコンビニやスーパーにお買い物に出かけます。レジの列に並び、お財布を使って支払いをし、レジ袋を持ち続けて帰る、という練習になり、ソーシャルスキルトレーニングを自然に重ねることになりました。

—— お子さんそれぞれの個性や適正にあわせつつ、生きる力を育てていくんですね。

その子のやりたいことに、とことん付き合う。そして、言葉にならない子たちの想いや能力を見出し、心を耕し、やる気の芽を見抜き、育む。そんな学校です。

娘は机に座って教科書を開いたり、字を習ったりするような発達段階にありませんでしたが、愛育学園なら安心して過ごし、伸びるかもしれない。この学校なら、"初めて" が苦手な娘を体験に連れてきても大丈夫そうだと、確信しました。

後日、娘を連れて行くと、泣き出すこともなく、楽しそうにすうっと溶け込んでいきました。帰宅後の睡眠障害も出ませんでした。これまでにないことでした。

私は思い切って教頭先生に相談しました。

「娘は初めてが苦手です。慣れるのにとても時間がかかります。勤め先の育児支援制度には、子の慣らし保育のための休暇はありますが、小学校に慣れるための、親の付き添い休暇制度はありません。私はあと半年ほど育児休業をいただくので、その間に娘を時々連れて来ることは可能でしょうか」