ご病気があることで、社会的弱者に共感できる
――雅子さまのご体調はいかがですか。
大久保さん:だいぶ快復はされていますが、毎年雅子さまの誕生日に伴って出される医師団の見解にあるように、相変わらずご体調には波があります。例えば、都内のお出ましのときなどには、ご出発の15分くらい前に「両陛下でいらっしゃいます」という発表が宮内庁からあるのです。それまでは、陛下お一人という広報がされていますが、御所出発の直前に雅子さまもご一緒という情報が出されることがたまにありますね。
――どうしてそうなるのでしょうか?
大久保さん:雅子さまは、当然、ご一緒にお出かけしたいと願われていますが、直前までご自身の体調がはっきりとしないことがあるのでしょう。まさにこれがご病気の特徴で、ギリギリまで体調を見極めて判断されるからだと思います。長年の病気との付き合いの中で、雅子さまは「こういった準備をして体を休めると行ける」という体験的なノウハウを分かっていらっしゃるんですね。体調がよさそうだと思われるかもしれませんが、その裏には大変な努力をされているんだろうと思います。
ご自身が病を抱えているだけに、病気で日常生活が困難な方やさまざまな事情で苦しんでいる人たちへの深い理解とシンパシーを共有されていると思います。社会的弱者への思い遣りや労りを常にお持ちになっていることが、逆に雅子さまの「慈しみ」となって表れていると思います。
――皇室の方は、公の場で感情をあまり表さないようですが、雅子さまは泣かれたり、涙ぐむ場面がありますよね。
大久保さん:感情を無理に抑えることをしないで、自然に自分の心情を表に出すことができる方なのでしょう。ご自身の思いをそのまま素直に出されるのが、雅子さまらしいところだと思います。
――全能ではないですものね。
大久保さん:そうそう、生身の人間ですから。生身の人間でありながら、皇室制度というのは非人間的なことを強いるような体系になっています。そうした国のかたちのなかで、皇室の方たちは、その枠の中でしか行動できないというところで、ある意味では犠牲を強いられている。皇室の方々に犠牲を強いているという自覚を国民が持ちつつ、皇室が私たちにもたらすことや、私たちにとってどんな存在であるかを考える。そして、私たちに必要だと感じたら、ご苦労さま、ありがとうという気持ちを素直に表出できるようになるといいなぁ、と思います。
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●大久保和夫(おおくぼ・かずお)
毎日新聞客員編集委員。長年、宮内庁担当記者を続け、皇室を通して日本と日本人について考えることを大きなテーマにしながら、ジャーナリストとして活動している。
●聞き手
高木香織(たかぎ・かおり)
出版社勤務を経て編集・文筆業。皇室や王室の本を多く手掛ける。書籍の編集・編集協力に『美智子さま マナーとお言葉の流儀』『美智子さまから眞子さま佳子さまへ プリンセスの育て方』(ともにこう書房)、『美智子さまに学ぶエレガンス』(学研プラス)、『美智子さま あの日あのとき』、『日めくり31日カレンダー 永遠に伝えたい美智子さまのお心』『ローマ法王の言葉』(すべて講談社)、『美智子さま いのちの旅―未来へー』(講談社ビーシー/講談社)など。著書に『後期高齢者医療がよくわかる』(共著/リヨン社)、『ママが守る! 家庭の新型インフルエンザ対策』(講談社)。
キャプションは過去の資料をあたり、敬称・名称・地名・施設名・大会名・催し物名など、その当時のものを使用しています。
バナー写真/JMPA
構成・文/高木香織
編集/立原由華里
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