仕事がいつの間にかモンスター化して、私たちの人生の真ん中に居座っているという現実。この現代病から抜け出すのに必要なのは、「自分の価値」に対する考え方を変えることだと著者は指摘します
仕事を軸に生活するのではなく、生活を軸に仕事ができるはずだ。
そしてその変化は、「あなたの価値は仕事で決まるわけではない」というシンプルな認識から始まる。――『静かな働き方 「ほどよい」仕事でじぶん時間を取り戻す』
仕事は「宗教」の代わり?
アメリカ人の著者がアメリカ社会を取材して書いた本なので、日本社会とは少し違うなと感じられる部分も出てきます。
本書に登場するライアンは、大学教授であると同時に、教会の牧師。人々の宗教観を研究テーマにする彼は2019年、「ノンズ」と呼ばれる無信仰者がアメリカで急増していることを発見しました。ライアンの言葉を借りれば、アメリカ人にとって宗教は「神聖な要素を含む社交クラブ」。そしてそこから離れていったアメリカ人たちが向かう先が「職場」であり、人々はそこに依存するようになっているのではないかという仮説が成り立ちます。
日本では、欧米ほど宗教が日常生活に密接に関わりません。しかし宗教を「コミュニティ」と読み替えると、日本でも「仕事依存」が起きていることの背景として実感がわいてくるではありませんか。例えば核家族化、生涯未婚率の上昇、ご近所づきあいの希薄化、コロナ禍によるコミュニケーション減少……。
コミュニティに参加しなくなればなるほど、人々はその穴埋めを仕事に期待するようになる。――『静かな働き方 「ほどよい」仕事でじぶん時間を取り戻す』
「元ワーカホリック」の一人として登場するテイラーが、勤務先のベンチャー企業のアットホームな文化を居心地よいと感じ、知らず知らず仕事にのめりこんでいくようになった原因もこれかもしれません。職場が社会生活の大部分を占めるようになることで、私たちは仕事に「依存」するようになるのです。
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