出会いの機会は増えても「出会いリスク」が上昇
——こうして聞くと、結構周りからや社会全体のプレッシャーというのも大きいですね。純粋な“自分由来の動機”は意外とそんなに大きくないというか。
牛窪:データで見ると、日本は「事実婚」が数%しかいないんです。日本社会の風潮として、結婚という契約形態を選択することで、周りからも「あの人は結婚している」と認識される。「結婚を望む若者」が8割以上いるのも、一つはそうした効果や影響を重く見ている部分があるからだと思います。
——多くの人が結婚したいと思っている一方で、周りが口を揃えて言うのが、「出会いがない」ということです。自然に出会えたらそれが一番いいけれど、職場は既婚者ばかり。仕事でも出会いがない。だから仕方なくマッチングアプリをやっている、という人も多いです。実際、出会いの機会は減っているのでしょうか。
牛窪:「本当に出会い自体が減っているのか?」という大前提の部分でいうと、実際は「むしろ多すぎて選べない」状態だと思います。インターネットやマッチングアプリの進化で、今はSNSやアプリで誰とでもすぐ知り合いになれますし、他者にアクセスする手段は格段に増えています。だから、出会いの数自体は以前に比べれば遥かに多いはずなんです。
ただ、たとえ同じ職場で働く同僚のことを「いいな」と思っても、今は気軽に食事に誘うこともしにくい環境です。気軽な感じでLINEをしたいけれど、一歩間違えばSNSで「こんなこと言われた」と晒されるかもしれない。「恋愛リスク」以前に、ストーカーなど一方的に思いを寄せられる「出会いリスク」もあります。「一緒にご飯食べない?」というちょっとした声かけも、下手をしたらハラスメント扱いされてしまう現代では、出会いそのものがないというより、出会ってもあえて深い関係になるのを避ける、だから恋人関係になりにくい、と言うほうが正しいでしょう。
「格差のシャッフル」が起こりにくくなった
——SNSやアプリを通じた出会い、ネットを通じた他者との接触は増えているけど、リアルの生活で恋愛に繋がるような出会いや深い関わりは減っているわけですね。
牛窪:あとは、出会いにもかなり“偏り”が出てきています。昭和の高度経済成長期~バブル期ぐらいまでは、結婚によって「格差のシャッフル」が起こりやすい環境でした。例えば、高卒や短大卒などのいわゆる高学歴とは言えない女性でも、東大や早稲田、慶應卒の高学歴男性たちと職場恋愛をしたり、周りからの紹介で結婚できたり、というケースも一定数存在しました。
でも今は、男性も女性も、自分たちと同じような学歴や生活レベルの相手でないと結婚したがらないんです。東京大学と東京工業大学の男性たちにグループインタビューをしたことがありますが、「親や親戚でも、高卒や短大卒の女性と結婚した人はいない」「学歴や家柄が違いすぎる人とは最初から話も合わない」と、皆さん堂々と言い放っていました。
情報が溢れる社会では、最初から選択肢を絞るために「条件に合わないと思う人」を自動的に排除する傾向にあります。よくよく話せば深い関係を築ける相手かもしれないけれど、でもそこまで目配りするとキリがないので、最初からフィルタリングをせざるを得ないんです。コンビニでも3秒どころか1秒足らずで商品を絞り込むぐらい、現代人のフィルタリングは顕著になっています。
そんな中でも、例えば信頼できる誰かやAIなどが、「この人は、見た目は好みじゃないかもしれないけど、実はあなたにピッタリの性格だから、会ってみたら?」とおすすめしてくれれば、まず条件でふるいにかけるような現状も、少しは変わるとは思うんですけどね。
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