副業禁止の職場では従業員の約7割がこっそり副業をしている――独立行政法人労働政策研究・研修機構が2023年に発表した最新調査ではそんな結果が出ているそうです。
副業解禁と言われて数年が経ちましたが、副業禁止を就業規則に掲げる企業はまだ多くあります。『部長は少女漫画家』は、そんな副業禁止の職場で、部長の副業調査をしなければいけない立場なのに、自分自身がすでにヒミツの副業をしている課長の男性が主人公です。
電機メーカー営業部の課長・白崎翔は、最年少で課長に上り詰めた実力の持ち主。彼の働く会社はいわゆる伝統的な日本企業のため、副業は禁止されています。ある日、上司の部長が業務時間内に副業をしているという疑惑が出て、白崎はその調査をしないといけない立場に。
でも実は、彼も会社員をしつつ、新人少女漫画家という副業を持っていたのです⋯⋯!
これまではコソコソと少女漫画を描いてきた彼でしたが、副業がバレて左遷された部長の代わりに、部長に昇格。良いことは重なるもので、副業の方でも見事、連載デビューが決まってしまいます。喜ばしいことなのですが、部長と少女漫画家の両立はできるのか? そして副業が会社にバレずにいけるのか!?
部下には少女漫画が大好きな女性社員もいて、いつバレるかわからない!
本作は、そんな白崎の会社員&漫画家としての奮闘ぶりをひやひやしながら見届けるコメディです。
白崎に学ぶ「追い風の吹かせ方」
これは、部長に昇格と、漫画の連載が開始するという「追い風」が吹いている男の物語なのです。
左遷された部長は業務時間内に副業をやってしまっていた=本業をなめていたんですよね。でも白崎はどんなに〆切ギリギリでも業務時間外に漫画を描くと決めていて、職場でも休憩時間に漫画を描いているので問題なし。
業務時間内に副業をやっていた部長と違うのは、本業も副業も全力であること。対して、最年少で課長になり、そして部長になっても決して本業をなめることなく、全力で取り組む白崎には、「追い風」が吹くべきして吹いているのです。
「二足の草鞋」をこなす会社員のリアリティがすごいと思ったら⋯
白崎にとって少女漫画家として活躍すること=夢や自己実現なのですが、彼を見ているとキラキラしているだけではなく、〆切までに描き上げないといけなくて休憩時間に必死に描いたり、本業と副業の両立にげっそりしていく姿も描かれています。でも、ファンの部下から感想をもらうと一気に顔が耀いていますが、彼の日常は大変すぎる⋯⋯。体力的に大丈夫なんでしょうか。
このパラレルキャリアの描写がやけにリアリティがあるなあ、と思ったら、原作の古都かねるさんはまさしく会社員をしながら漫画家をされているそうです。原作者ご本人がまさに「時代の潮目で次の生き方を模索する人」なのでした。
そして、漫画担当の西村マリコさんの初連載作『帰らないおじさん』は、働き方改革で定時に退社しないといけなくなったおじさんたちの姿を描く作品で、これまた本作と共通する「時代の潮目で次の生き方を模索する人」というテーマがあるような気がします。
このお二方だからこそ、生まれた作品なのでしょう。
さて、キャリアを積んできた白崎は、部下とのコミュニケーションも大事だと感じるシーンも。おごることなく、本業・副業の両方に真剣に向き合う白崎には今後もますます追い風が吹くはず。彼はこの追い風にどう乗っていくのでしょうか? 2巻が3月13日に発売されたこのタイミングでぜひ白崎の奮闘ぶりを見てあげてください!
<作品紹介>
『部長は少女漫画家』
古都 かねる (原著) 西村 マリコ (著)
竹井エレクトロニクス(株)営業部の課長・白崎翔は、上司の部長が副業していないかの調査をするよう、社長直々に依頼される。史上最年少で課長に抜擢され、他人に厳しく自分にもっと厳しいと評される白崎だが、実は彼には、人には言えない秘密があった⋯⋯! 副業あまいか、すっぱいか!? バレたら終わりのハイテンション副業コメディ!!
作者プロフィール
原作・古都かねる
コミックDAYSにて『青とオレンジ』で、漫画家デビュー。現在は『部長は少女漫画家』の原作担当。
X(旧Twitter)アカウント:@kaneru_koto
漫画・西村マリコ
2019年、『星クズポリス』でデビュー。「イブニング」(講談社)にて『帰らないおじさん』を初掲載&初連載。現在は『部長は少女漫画家』の漫画担当。
X(旧Twitter)アカウント:@westvillage29
構成/大槻由実子
編集/坂口彩
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