『愛と、利と』
銀行の窓口で働く地方出身の契約社員スヨン(ムン・ガヨン『女神降臨』)は仕事熱心で営業実績も抜群だけど、人をまったく寄せ付けないことでも知られる行内でも有名な美女。同じ支店で働くサンス(ユ・ヨンソク『賢い医師生活』)は、新入社員の時から好きだった彼女についに告白するもののあえなく失敗。
そんなサンスに猛アタックしてきたのが、新たに異動してきたスーパーお嬢様のミギョン(クム・セロク『五月の青春』)。スヨンは、田舎から出てきたばかりの年下警備員ジョンヒョン(チョン・ガラム『ラブアラーム 恋するアプリ』)の告白を受け入れ、四角関係が展開してゆきます。
ドラマのタイトルには同音異義語の多い韓国語らしく、2つの意味があります。ひとつは「愛の利害」。ドラマの前半は交錯する4人の関係に韓国の格差社会が絡んで展開します。4人の金銭感覚を、それぞれが朝に飲むコーヒーで鮮やかに描く場面は大きな話題になったのですが、そういう中でそれぞれが「一緒にいるのは、好きだから? 得だから?」ということに葛藤するわけです。
一方、妻の家柄で出世が決まる「愛と利害」が分けがたい銀行の中で、美人だけど家柄も学歴もない圧倒的弱者のスヨンは「結婚前に(もしくは婚外で)あんな美人をモノにしたい」という無数のアホ男たちにセクハラの標的にされており、それゆえにスヨンは男が口にする「愛」を全く信用していません。そういう中で浮かび上がってくるのがタイトルのもうひとつの意味=「愛の理解」で、それを証明しようとするのがサンスです。
でもこのドラマがすごいのは、スヨンが愛について理解したその後なんですね。ドラマは「愛とはこういうもの」と描いた上で、従来の恋愛もののステレオタイプ=「恋愛至上主義」「愛されて結婚することこそ幸せ」とは異なる女性の幸福を描いた、なかなかの作品です。ワケわからんかった! と言う方は、別記事でmi-molletさんには恐縮ですが「渥美志保による完全ネタバレ解説」をお読みいただけたらと思います。
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